ネットワークシステム研究室
指導教員 坂本直志 准教授
07EC073 鈴木 和貴
近年、インターネットが急速に普及し、BtoB、BtoC等のeビジネスなどの電子商取引の拡大に伴い、 膨大な数のWebサイトが日々生産そして蓄積されてきた。そんな中、Webサイトを持つ中小企業が 検索エンジンの上位に表示される事は、非常に大きな価値を持つようになった。 特に、企業にとってWebサイトはその企業その物を移す鏡であり、検索エンジンの検索結果に 上位表示されるかどうかは、外部からの評判や利益に直結する重要な問題である。
よって、知名度のない中小企業は、自身の知名度を向上し宣伝をする為に、 インターネット上で広告活動をする必要が出てきたと言える。この問題に対して、 インターネット上で知名度を上げる為の手段として一番注目されている広告活動がSEOである。 それは図1から、アクセス誘導対策でSEO対策が最も多い事から分かる。SEO対策によって検索順位が 上位に入れば、多くのトラフィックを獲得する事が出来る為、競争率が高い競合他社を跳ね除け、 集客力の向上や知名度の向上が見込めるだろう。
また、内部施策で独自のコンテンツによるWebサイト構成や、 キーワード選定で検索ワードを独占すれば、競合サイトとの差別化も図れる為、SEO対策は Webサイトを持つ企業に取って非常に有益であると言える。それは図2から、最も効果のある対策がSEO対策である事から分かる。 よって、SEOは必要不可欠なマーケティング手法の一つであると言える。
しかし、日々更新される検索エンジンのアルゴリズムの変更に対して、常にWebサイトを 上位表示させる為には、検索エンジンの最新の動向に注意する必要があり、順位が変動、 または降下した要因を分析し、それらを元に明確な成果を出し続けなければならない。 また、後述するがSEO対策は単一サイトでは解決できない為、個人、または一企業が 対策するにはほぼ不可能であると言える。その為、SEOのノウハウを持つ専門家ではない限り、 非常に困難である。
そこで、本論文ではSEO企業の手法を調べ、実際にSEO企業にSEO対策を 受注したWebサイトを追っていき、その結果、検索順位にどう影響するのか注目し、 SEOの有益性を考察していきたいと思っている。
まず本論文では、2章でSEOの根本部分である検索エンジンとは何かを説明し、 その一例としてGoogleについて取り上げ、SEOが必要になった背景を説明する。 次に3章で、SEOの特徴や歴史を述べ、その専門家である現在のSEO企業の特徴を示しながら、 SEOとSEO企業が必要となった理由を論じていく。4章では、実際にSEO企業がSEO対策を 受注したWebサイトを追っていき、競合他社との検索順位の違いを複数ワードや時間経過と 共に見ていき、SEO対策は検索順位にどう影響するのか注目し、5章でSEOがどのように 有益であるかを考察し、最後に今後の展望を述べたいと思う。
図1. アクセス誘導対策
図2. 最も効果が高いと思うアクセス誘導対策
検索エンジンとはインターネットに存在する情報を、与えられた検索式に従って Webサイトを検索する機能を持ったプログラムまたはシステムの事である。 多くのインターネットユーザーは、検索エンジン経由でWebサイトを訪問する。 言わばインターネットへの入口である。
現在では様々なサービスが加わりポータルサイト化 が進んだ為、情報を検索するシステム全般を含むWebサイトを指す事も多い。 代表的なWebサイトとしてGoogle、Yahoo、MSNがある。 この検索エンジンのシステム部分は、大きくロボット型検索エンジンとディレクトリ型 検索エンジンの二つに分かれる。
今日の日本では、検索エンジンのシェア90%以上は GoogleとYahooのロボット型検索エンジンが用いられている。また、YahooはTechnologyの 開発終了に伴いGoogleの検索エンジンへ移行している。さらに、Googleは60%以上 のシェアを独占している。(図3)これらの事を考えると、本論文で取り扱う検索エンジンは、 Webマーケディングに大きな影響がありそうなロボット型検索エンジンであるGoogleに 対するSEOの研究が最も重要であると位置づけられる。
図3. サーチエンジンシェアの統計をグラフ化
ロボット型検索エンジンの大きな特徴として、クローラと呼ばれるプログラムを用いて、 WWW上にある膨大な情報を効率良く収集する事が挙げられる。クローラとは、 検索エンジンのデータベースを作成する為に、世界中のWebサイトの文書や画像などを 自動的にデータベースに保存するプログラムである。
巡回方法は、Webサイトのリンクを辿り、 新たにWebサイトが増えている場合、または更新されていた場合はデータベースに登録し反映させている。 クローラの事をスパイダー、もしくはロボットと呼ぶ事もある。データベースに反映する際に、 その中間処理を担う処理をしているプログラムをインデクサと呼ぶ。
インデクサの役割は、クローラが収集したWebサイトの情報を解析し、検索アルゴリズムが扱いやすいデータへと変換し データベースに格納する。そして、ユーザーから要求されたキーワードに対して、 そのデータを検索エンジンの検索アルゴリズムが適合度を、スコアと呼ぶ値で算出し順位を決定している。 検索アルゴリズムは検索エンジン毎に異なり、ユーザーが求める結果を提供する中心的な技術部分である為、 非公開とされている。そして、この検索アルゴリズムにWebサイトを高評価させ、 検索上位に表示して貰うのがSEOの要とされる。
ディレクトリ型検索エンジンの大きな特徴は、人手で構築したウェブディレクトリを検索する事である。 ウェブディレクトリに登録するには、編集者自らインターネットを巡回し探す事や、 利用者から登録申請されたWebサイトを審査した上で、カテゴリ分類し、説明を付け登録するという手順で行われる。 専門の人がウェブカテゴリを分類し、構築・審査している事である。その為、目的のWebサイトが探しやすく、 検索結果がキーワードとの関連性が高いサイトやコンテンツの質も高いサイトが多い。
欠点は、全て人手で登録を行っているので、膨大にあるWebサイトをディレクトリに反映させる事ができない為、 現在では主流ではなくなっている。また、ディレクトリ型検索エンジンは、人がウェブディレクトリを構築している為、 SEO対策は取れない。従って、SEOはロボット検索エンジンの為の技術であると言える。
情報収集をする時の検索エンジンの媒体毎の使用率を、情報通信白書2005年度版の統計を参考にグラフ化すると、 図4になる。このグラフから、様々な情報を収集する際の媒体としてインターネットを用いる事が多い事が分かる。 そして、インターネットを用いてWebサイトで情報を収集する際、検索エンジンの検索結果の上位が目に付くので、 企業等は、提供したい情報や商品などが掲載されたWebサイトを、上位の順位まで上げたいと考える。 その順位を上げる手法がSEOである。
表1 情報収集に用いる媒体使用率
統計 | ニュース | 仕事の情報 | 勉強の情報 | 趣味や遊びの情報 | 旅行やお店の情報 | 生活情報 | 健康情報 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
インターネット | 67.4 | 61.6 | 65.1 | 88.6 | 80.3 | 73.3 | 62.9 |
テレビ | 84.0 | 12.8 | 11.9 | 35.6 | 28.1 | 26.1 | 20.5 |
新聞 | 62.2 | 26.0 | 15.5 | 11.6 | 11.5 | 26.1 | 20.5 |
雑誌・書籍 | 6.2 | 31.6 | 45.2 | 54.6 | 50.3 | 28.6 | 33.2 |
図4. 情報収集に用いる媒体使用率
Googleはインターネット検索エンジンの一つであり、この検索エンジンを含むその他サービスを 提供している企業の名称でもある。一般にGoogleと呼ぶ場合、Google検索サービスを指す事が多い。 また、日本語の動詞で物事に纏まりを付ける「括る」という意味と、Webサイトを纏める役割を 持った検索エンジンのグーグルの略称「ググル」の語感が似ている事から、検索エンジンで検索する という意味の動詞として「ググる」という用語が用いられる事もある。 2.1章でも記した通りGoogleはロボット検索型エンジンである。無論、クローラ部分のアルゴリズムは 非公開であるが、そのアルゴリズムの一部であるPageRankについては、多少公開されている。 このPageRankは、Webサイトの重要度を決定する為のアルゴリズムで、自身または他のWebサイトの評価が、 0~10のランクが割り振られWebサイトの重要度が可視化出来る。詳細は後述する。 この2.2章では検索エンジンであるGoogleの検索の仕方と画面の見方について説明する。
以下の図ではGoogle検索での手順を示す。(図5)
図5の①で検索したい単語を入力する。
図5の②で検索を開始する。
図5. Google検索画面
図5の②でカーナビと入力し検索すると、カーナビに関わるWebページが順に表示される。(図6) 検索画面にカーナビと入力し、出てきた画面(図6)の①と③の部分は、Googleサービスの一つで GoogleAdwordsの有料の広告サービスである。このように、検索画面に広告を載せるには、 GoogleAdwordsに、広告料を支払う必要がある。広告が表示されるには、広告主が指定したキーワードに加え、 地域や入札単価などの要素に基づき、ユーザーの検索キーワードと関連性の高い広告が表示される。 本論文で重要なのは、図6の②の、検索エンジンに与えられたキーワードを元に関連する Webサイトが表示される部分である。図6の②の枠の中で、④、⑤、⑥と、検索結果が順番に表示される。 検索結果1ページの②の部分の一番上を、検索ランキング順位1位と呼ぶ。以下順番に2位、3位とし、 ブラウザの設定にもよるが、大体10位で、次のページへと移り、(図7の①)また、2ページ目(図8の①)の一番上から、 また順番に11位(図8の②)と数えていく。
例を挙げると、「カーナビ」を検索すると
このように、2ページ目で、検索エンジンランキング検索エンジン20位までの情報と有力な広告が得られる。 従って、3ページ目に行くには、1ページ目の10個のWebサイトを下にスクロールして次に、 2ページ目も同じく10個のWebサイトを下にスクロールして次に、ようやく3ページ目に辿りつく。 そして、1ページ目と2ページ目でほぼ知りたい情報を取得できるので、3ページ目以降のWebサイトは、 実質ないも同じとも言われている。そこで、検索エンジンのクローラに高評価して貰うように、 Webサイトを書き換えて、1ページ目の見やすい場所に配置して貰うようにする手法をSEOと呼ぶ。 SEOの詳細については、3章で説明する。
図6. Google検索に単語カーナビと入力
図7. 次のページへ
図8. 2ページ目の検索結果の順位
2000年にGoogle検索エンジンは独自のサイトの評価方法としてPageRankを導入した。 このPageRankは、単一サイトでは解決できない判断基準を用いたアルゴリズムである。 これは、検索エンジンがWebサイトを評価する際、被リンク数とそのリンクの全てのページの 点数を指数で算出し、Webサイトの重要度を測る技術である。
PageRankのスコアは、0~10の10段階で分けられており、この数値が高い程、順位表示が 上位に掲載される。PageRankを見る方法は、主に2つある。1つは、Googleツールバーを導入する方法である。 ブラウザのツールバーの部分に、自動的にページランクが表示される。2つ目は、PageRankを調べられるWebサイトを用いる。
私はこのGoogle PageRankの指標は、Webサイト毎にどう偏りがあるのか調べてみた。表1の調査方法は、 2013年11月16日に、企業、機関のWebサイトを私が選んだ20個からPageRankの指標を、 Google PageRank CheckerのWebサイトでPageRankを計測してみた。 また、4章で調査したカーナビ12企業のPageRankを計測した。
表2 企業・機関のWebサイトのPageRank
これを見ると、世界または国内で有名な検索エンジンや動画サイト、人々の交流が盛んなSMS、 政治に重要なWebサイトがPageRank7以上になる事が分かる。一方、大学機関や企業は、 PageRank4以上が多く、結果を纏めると、以下のようになるのではないかと思われる。
Googleページランクが0のWebサイト:評価なし、出来て間もないサイト
Googleページランクが1~3のWebサイト:標準のサイト
Googleページランクが4~6のWebサイト:人気サイト、大学機関、企業等
Googleページランクが7~9のWebサイト:ポータルサイト、重要なWebサイト、SMS
Googleページランクが10のWebサイト:最重要なサイト
図9. Google PageRank Checker
この章では、SEOと、SEOを対策している企業について説明する。
SEOとは、"Search Engine Optimization"の略称である。これは検索エンジンが高評価してくれるように Webサイトを最適に書き換える事を言う。日本語に直すと、"検索エンジン最適化"となる。 1990年代に検索エンジンが登場し、徐々にWebサイトが増加し始めてまもなく、 Webサイトの所有者で検索結果を上位表示したい人は、検索エンジンに高評価して貰う為Webサイトの書き換えを行った。 最適化の手法としては、Webサイトの構造の要であるHTMLを書き換え、またはWebサイトのコンテンツを 充実させる方法などある。たとえば、1998年頃には、Webサイトの内容を検索エンジンの結果に正しく反映させる為、 metaタグと呼ばれるタグをHTMLに埋め込む方法がある。metaタグとは、サイトの情報を定義する役割を持っており、 適切に定義すると、検索エンジンがそのサイトを正しく認識できる。そして検索エンジンがmetaタグを読み込み、 その情報を求めるユーザーの検索結果に表示される。1999年頃には、キーワードを埋め込む方法があった。 HTMLのコンテンツに関係のあるワードを、HTMLに沢山埋め込む事で、関連性が高いと検索エンジンに 思わせて順位を上げていく手法である。これらHTMLを見直して書き直し、検索結果と順位を向上させていく手法がSEOである。 Webページが、検索エンジンに高評価されると、サーチエンジンの検索順位が上位に表示される。 すると、検索エンジンの利用者の目に届きやすくなる為、訪問者増加など広告や宣伝になる。 2002年頃に、順位結果を上位に表示させる専門のSEO企業が立ち上がり、その数を増していった。 但し、検索エンジンのクローラに、高評価させる為に行ったSEOにより、Webサイトのコンテンツが 充実していないのに上位に上がったりした為、そのような事を防ぎ、良質なWebサイトのみを 上位に上げようと、ランキングのアルゴリズムは年々改良されていった。その為、年度毎にSEOの手法は 改変を繰り返した。そして年々改良されたアルゴリズムが一際変化したのは、Googleが2000年に、 Webサイトに張られたリンク構造を元にしたアルゴリズムであるPageRankを用いて、 単一ページだけでは順位が上がらないようにし、重要性があるページは、多くのWebサイトから リンクされる事で、順位が上がるようになった。 その為、企業を新規に立ち上げや日も経っていない企業、または競合している中小企業等は、 SEO対策を講じなければ検索結果上位に反映される事は難しいとされている。 また、前までは自身のWebサイトのHTML文の最適化だけで順位が上昇していたが、PageRankを機に、 最適化を含む、リンク構造の増強など、現在のSEOは、検索エンジンがWebページを 上位表示する為の『手段』その物を意味して呼ぶこともある。
Webサイトの検索順位は、上位に表示される程クリック率が高まるので、単純に訪問者数が増える事。 それがSEOの本質であると言える。そして、訪問者数が増える事で得られるメリットは、 キーワードやSEO対策されたWebサイトの内容によって様々な効果があるが、一般的なメリットを挙げるとすると
等がある。
Googleの検索エンジンのアルゴリズムは一般的には非公開である。さらに、年度毎に検索エンジンの アルゴリズムが異なる為、SEOを行うには今現在のアルゴリズムにあった手段を取らなければならない。 そこで、SEOの手法を開発するには、検索エンジンのアップデートで起きた原因から調べる事象からの分析する方法と、 Googleが取得した検索エンジンのアルゴリズムに関わる米国特許から調べる方法、SEO対策を行っている企業を 調べる方法の三つから推測する方法がある。
検索エンジンのアルゴリズムの変更やアップデートの影響を受けて、順位が変動したWebサイトの 原因を調べて分析する事で、Googleからの順位降下ペナルティを受けずに済むように最適化をする方法がある。 ただし、アルゴリズムは公開されていないので、ネット上で推測されている順位変動に関わる部分を抜き出し分析してみる。 調査方法は、インターネット上のWebサイトから、SEOの手法やアップデートの影響を受けて順位が 変動したWebサイトの原因に関連のあるサイトを20個選び、年代毎に抜き出してみた。
事象からの分析結果は以下の通りになった。
年度毎に起きた出来事をWeb上から分析した結果、今までの年度毎のSEOの手法が分かる点だ。 欠点としては、すでに起きた事象から推測する為、現在のSEOを予測する事が難しいという点である。 よって、この方法は、過去のSEOの手法を調べるのには最適だが、現在のSEOを調べるのには向いていない方法だと言える。
Googleは検索エンジンのアルゴリズムの特許をいくつか取得している為、 検索エンジンに関わるGoogleの特許を調べる事で、現在のアルゴリズムやペナルティを回避し、 検索エンジンの最適化を調べる方法がある。例として、2004年の発行された米国特許ナンバーUS6,725,359 B1を見ていく。 図9の201では以前のアルゴリズムのOldscoreに加えて202のLocalScoreを導入し、 203で、その二つのアルゴリズムから検索順位を決定する事を意味している。 新しいアルゴリズムLocalScoreは、文書XというページにB(y)というリンク元があるとして、 同じか関連するホストのB(y)のスコアリンクを削除すると記述されている。 また、本文から抜粋すると
「302). More specifically, let IP3(x) denote the first three octets of the IP (Internet Protocol) address of document x (i.e., IP subnet). If IP3(x) = IP3(y), document y is removed from B(y)」
と書かれている事から、A・B・Cブロックまでが同じIPアドレスのサイトからのバックリンクは、スコアが削除される事が分かる。 よって、Cブロック以下が同じIPアドレスからの被リンクは、一番高いスコアを除き削除される。 ちなみに、Cブロックは、日本ではクラスCと呼ばれている。 以上、米国特許ナンバーUS6,725,359 B1から分かる事は、Cブロックまで同じIPアドレスを持つリンク元は、 一番高いスコア以外削除される事が分かる。Googleの検索エンジンの特許は、検索アルゴリズムの部分に当たるので、 過去のGoogleの米国特許や、今現在取得中の特許から、現在のSEOの手法にも使われている可能性もあり、 この方法は有効であると言える。
図10. 米国特許US6,725,359 B1 Fig2
図11. 米国特許US6,725,359 B1 Fig3
このように事象の分析や、検索エンジンに関わるGoogle特許から、ある程度SEOの手法を調べる事は出来る。 しかし、現在のSEO対策を手っ取り早く知る為には、SEOを取り扱っている専門の業者の宣伝や、手法に注目する方法がある。
SEO企業とは、個人又は企業が持つWebサイトを検索エンジンに適切に上位表示させるノウハウを持った企業の事を言う。 黎明期のSEO企業は月額報酬型が多かった。しかし、検索エンジンに上位表示されなくても費用が 発生してしまう場合も多かった為、年々成果報酬型に切り替わっていった。月額報酬型と成果報酬型の違いは、 月額報酬型だと、成果が上がらなくても毎月固定料金を支払わなくてはならないのに対し、 成果報酬型は順位により決められた金額を日数分だけ払う事である。2012年現在、 私がランダムにSEO企業を27社調べてみたところ、27社全てが成果報酬型だった。 ちなみに、順位1位を仮定した成果報酬型の金額も調査してみた所、安い企業で月額5万円程度、 高い企業で月額18万円程度である事が分かった。
SEO企業は、どのような手法でWebサイトの順位を上げると宣伝しているのか、調べて見た。 調査方法は、3.3.1章で選んだSEO企業のWebサイトに書かれている内容を挙げる事にする。
などが見受けられる。
調査した結果は、年季が入ったSEO企業は、受注件数と、受注したキーワードの順位が一位を取ったなどの実績が多かった。 また、日が浅いSEO企業は、金額面の安さと価値のあるリンクの宣伝に力を入れている事が分かった。
実際に現在のSEO企業は、どのような施策を行っているのか、私はランダムにSEO企業を27社選び、 Webサイト上で施策されている手法について調べてみた。調査方法は、SEO対策の基本である内部施策が行われているのか、 またPageRankの評価をする為に、外部施策として質の良いリンクが貼られるのか。 例を挙げると、以下のGMOSEOの企業のWebサイト上での施策方法と、比較サイトでの広告のSEO手法などから、 企業毎の手法を纏めてみた。
図12. SEO対策.NETのWebサイト
図13. SEO比較の広告サイト
表3 SEO業者比較表
SEO企業 | SEO企業のWebサイトに書かれていた主な手法 |
---|---|
GMOインターネットSEO | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ユナイテッドサーチ | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ファイブスターSEO | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ウェブクリエーション | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
すまいるネット | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ビジョン | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
アウンコンサルティング | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
SEO対策.net | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
DualSEO | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
dym | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ベルクリエイト | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
カレコミ | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
グローバルサーチ | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
PIA | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
インフォキュービック | 最適化、他詳細不明 |
サムライファクトリー | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
グットエイチピードットコム | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
プロモーションエージェント | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
アイティヒルズ | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ネットパートナー | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
クーイSEO | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
ジャックアンドビーンズ | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
PrimeSEO | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
Seo Partner | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
インフォニビリティ | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
オクエン | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
不動産HP制作.jp-SEO | コンサルタント+外部リンクの設置+最適化 |
表3により、金銭面、企業毎の解析クローラ、内部、外部の施策内容その物など、企業毎にノウハウがあると思われる。 ほぼ全てのSEO企業に共通として言える事は、専門スタッフによる内部診断に基づく最適化が多く、 外部施策は質の良い被リンクの提供であった。 また、上記のSEO企業毎のWebサイトを見ると外部リンクに拘りを持つ企業が多く、被リンク数とリンクの質が、 現在のSEOの根本を担っていると考えられる。
実際にSEO対策サービスを提供している企業を調べる事で、現在のSEOの手法を調べてみた。
被リンクを調べる方法として、Googleが無償で提供しているサービスにWebマスターツールがある。 これは、Google検索エンジンに適切に評価されているか、被リンクを一つずつ調べる事ができる為、 SEO企業に受注して、被リンクを貼って貰う際に、どこから貼られているか調べる事も出来る。 そして、そのWebマスターツールを用いて、SEO企業が貼っているリンク元のHTML文書が記事に公開されていたので、 そのHTML文から、他にもSEO対策されている企業を調べた所、カーナビ制作会社のアルパインも SEO対策をしている事が分かった為、SEO企業に対策された企業の順位ランキングが、 どうなっているか注目する事にした。
SEO企業では、複数ワードのSEO対策も施策されているので、カーナビ企業と適当な単語を私がランダムに5個選び、 アルパインとその他カーナビ企業の検索順位を調べてみた。図14は、複数ワードと組み合わせた順位ランキングである。 点がない部分は、10位以下の為除外している。
表4 カーナビ企業複数ワードの順位
順位 | カーナビ | カーナビ+車 | カーナビ+会社 | カーナビ+企業 | カーナビ+業者 |
---|---|---|---|---|---|
1位 | アルパイン | ||||
2位 | アルパイン | アルパイン | インクリメントP | ||
3位 | パナソニック | アルパイン | インクリメントP | 富士通テン | |
4位 | パイオニア | 富士通テン | クラリオン | ||
5位 | シーズラボ | シーズラボ | アールダブリューシー | ||
6位 | クラリオン | アルパイン | |||
7位 | アールダブリューシー | ||||
8位 | PanasonicElectronics | ||||
9位 | 富士通テン | ||||
10位 | 株式会社ゼンリン | Panasonic | パイオニア |
図14. 複数ワードの評価 時間毎の順位の変化-10月26日17:00調査
次に、検索ワード「カーナビ」で、時間毎に順位の変化を辿ってみる事にした。 調査方法は、10月26日6:00-15:00で一時間毎に、Googleの検索順位のデータを取った。
図15. 時間毎の順位の変化-10月26日6:00-15:00調査
図14を見てもらうと、複数ワードの全てに置いてアルパインが順位トップにいる。 また、他のカーナビ企業はキーワード毎に出現しない場合もあり、アルパインはSEO対策として 複数ワードの選定も行っている事が考えられる。また、アルパインのPageRankが5に対し、 パイオニアやパナソニックは、PageRankが6にも関わらず、アルパインの方が順位高い事から、 そのキーワードの場合、PageRankの高さより検索エンジンのクローラが、アルパインの方が、 重要度が高いと判断された結果ではないのかと考える。 次に、一時間毎にランキングの変動を記した図15を見ると、アルパインが常に2位を取り続ける結果となった。 また、他社のカーナビ企業は、カロッチェリアとエクリプスが、一時間毎のランキングの変動が激しく、 検索順位が10位以下になる事もあった。 以上の事から、SEO対策を複数ワードに施してあれば、「カーナビ 車」のように独占でき、 常に順位上位を保つ事が出来る。
本論文では、SEO企業が対策した企業を追っていき、SEOの有益性を調査するという題材で進めてきた。 その結果、複数ワードでは、SEO対策がなされたアルパインは他社のカーナビ会社を寄せ付けないというデータが取れ、 また「カーナビ」というキーワードに置いて、時間毎に見ると、常に他の競合企業よりトップである事から、 SEOの有益性が示せたと思う。 またSEOを別の観点から見ると、過去、そして現在のSEOとは検索順位を上げる手法その物を指すが、 それは目的であり、SEOの本質は、顧客から認められる環境を作る事ではないかと思う。 あらゆるマーケティングに置いて、顧客の抱える課題に応える事や、顧客が欲しいと思う情報を提供する事が最も重要であり、 SEO対策で検索順位が上がったら、それだけで有益であると考えずに顧客の抱える課題やニーズに応えられる環境を提供してこそ、 最もSEOの効果があるのではないかと思う。そして私は、その本質こそSEOの有益性に繋がるのではないかと考えている。
今回の調査では、アルパインと他社のカーナビ会社を、複数ワードと時間毎の検索順位からデータを取ったが、 それだけでは、SEO対策された企業の強みを引き出すには、まだデータ不足だと言える。 また、SEO業者が対策した企業は極秘扱いで、SEO対策された企業を見つける事が難しい為、 SEO業者が貼ったリンクを見つける方法を考える必要があるだろう。その方法が見つかり次第、 今後は、SEO対策された企業を時間や日にち毎に複数追っていき、SEOの有益性を述べて行きたいと思っている。
今回の研究にあたり、広範なご指導ご鞭撻を賜りました
東京電機大学工学部情報通信工学科准教授坂本直志先生に深く感謝いたします。