現代の生活にはインターネットは欠かせないものである。メール、情報閲覧、ゲームと他分野に渡って我々の生活と関わりを持っている。2003年度からインターネットの利用者の割合が6割を越え、今現在も増え続けている(下図参照)。
インターネットに接続するには端末(パソコンなど)では7層のプロトコルを経て、ノード(ルータやスイッチ等)によってデータの送受信を行う(下図参照)。この端末7層の処理をOSI(Open System Interconnection)参照モデルという。
この端末とノードの接続が数百メートル以下の小規模ネットワークをLAN(Local AreaNetwork)といい。数十キロメートル以下をMAN(Metropolitan Area Network)、数十キロ以上をWAN(Wide Area Network)と呼ぶ。本研究では、OSI参照モデルではデータリンク層、物理層を中心に、ネットワーク規模ではLAN領域を中心に述べていく。
ネットワーク技術は進化が早く、今現在最新のネットワーク機器であっても数年(場合によっては1〜2年)で古い機器として扱われてしまう。
そのためネットワークには以下のよう条件が常に求められている。
LAN規格は様々な種類があったが、この3つの条件を満たし生き残ったのはEthernetのみであった。
本研究では近年最も普及した有線LAN Ethernet(IEEE802.3)と無線LAN (IEEE802.11)の最新情報を報告する。
Ethernetは1973年に開発がスタートして以来、急速に発達した有線高速LANである。2007年度現在、大学などの主要なLANは100BASE-TXという100Mbpsで、より対線を用いたネットワークが主流であるが、1000BASE-Tなどの1GbpsのLANに置き換わろうとしている。
しかしIEEE802.3委員会では2006年に10GBASE-Tの規格を出し、現在は100GbpsのLANの策定に取り組んでいる。
一方、無線LANも今ではゲーム機に内蔵されるほど普及してきた。ただし現行規格である802.11gでは54Mbpsと有線LANに水をあけられている状態である。次世代規格である802.11nに対し、先行投入された製品が発売されてきており無線LANも普及から高速化のフェーズに入った。
本研究ではEthernetの新技術である10GBASEの規格とIEEE802.11nについて述べる。。
本章ではLANの通信技術の一つであるEthernetの高速通信技術を理解していく。
イーサネットとはLAN(LocalAreaNetwork)規格の一つ。従来、様々なLAN規格が提案されてきたが現在では基本的にはほぼ全ての 有線LANがイーサネットだと言える。これはIEEE802.3として規格化されている。初期の接続方法は基幹媒体と全ての端末とつながっているバス型 だったが、一部を残して既にない。今現在ではHUBという装置を使用したスター型の接続が主流である。
イーサネットの初期の接続方法はバス型という一本の長いメディアを全端末が共有する形態だった。つまりひとつの端末がデータを送信すると全ての端末
に送信されることになる。またHUBを使ったスター型でもリピータハブと呼ばれる装置も基本的にはこのバス型の形態を内部に閉じ込めた形態なので全ての端
末に送信される。このような形態では1つの端末は送信と受信を同時にできない。これを半二重接続という。このような通信を制御するためにCSMA/CDが
作られた。
CSMA/CDは以下の動作を行いアクセスを制御する
*べき乗バックオフアルゴリズム
データはMACフレームに入っており、MACアドレスから自分宛かそうでないかを判断する。
上位プロトコルと値
値 | プロトコル |
0800 | IPv4 |
0806 | ARP |
0835 | RARP |
089B | Apple Talk |
8100 | VLAN |
8137 | Novel Network IPX |
8191 | Net BIOS/Net BUEI |
86DD | IPv6 |
10BASEシリーズ
規格名 | 標準 | ケーブル | コネクタ | 伝送距離 |
10BASE-5 | IEEE802.3 | 同軸ケーブル(10mm) | ヴァンパイア | 500m |
10BASE-2 | IEEE802.3a | 同軸ケーブル(5mm) | BNC | 185m |
10BASE-T | IEEE802.3i | UTP(cat3)2対4線 | RJ45 | 100m |
10BASE-F | IEEE802.3j | 光ファイバ(MMF) | 1000m |
*MMF=マルチモードファイバ
10BASE-5は、一番初めにできたEthernet規格である。同軸ケーブルを使用し、10Mbpsの伝送速度で、1セグメントあたり500m まで伝送可能となる。最大4つまでリピータにより接続可能であり最大伝送距離は500m×5=2.5kmにまでのばせる。1セグメント500mまで伝送距離が可能で使用する同軸ケーブルの耐久性が高いことから利用者からは非常に高い評価を得た。しかし、設置をする側からは10mmの太さの同軸ケーブルは曲げにくく、タップの取り付けにも専用の工具が必要だったりするなど扱いにくいものだった。ちなみにヴァンパイアの名がついた由来は同軸ケーブルとタップを接続する際、同軸ケーブルのに針を刺し心線と信号をやり取りする形からつけられた。
10BASE-5の扱いの難しさを考慮し、開発された規格。電気的な信号処理は同じであるが、主な変更点はケーブルの太さが5mmになり、ケーブルの両端にBNCコネクタを付け接続しやすくしたという2つが上げられる。伝送距離が多少落ちたが扱いやすかったため普及した。イーサネットのオリジナルというと10BASE-5だが10BASE-2も構造的にはほとんど変わりがないため10BASE-2もオリジナルイーサといわれることが多い。ただし、基幹線に接続箇所が多いためトラブルも多くまた、トラブルが起きると全ネットワークがダウンするという欠点があった。
4対8線の撚り対線(UTPケーブル又はUnsealed Twist Pair)CAT-3を使った規格。ただし使用しているのは4線のみで残りの4線は使用していない。今まではバス型の接続方法だったが10BASE-Tからはハブによるスター型の接続方法に変わった。ハブは基本的にリピータとして働くので、接続は4段までである。当初、ハブの中身がシェアードハブというものでこれは10BASE-5,2の接続方法と変わらないバス型のものだった。しかしハブがリピータハブに変わってからはハブを介してのスター型接続となった。この接続方法は今のイーサネットの接続方法と同じである。もともと電話線であったT(ツイストペアケーブル)が非常に扱いやすいことや安く手に入ることからイーサネットが1990年に規格化されてから大きく普及した。
光ファイバケーブルを使った初めての規格である。ハブを使用したスター型の接続を行う。使用波長は850nmになっている。10BASE-Fには 10BASE-FP、10BASE-FB、10BASE-FLとがあり、それぞれ用途が異なる。FPはパッシブハブ接続用に使用し、FBはバックボーン 用、FLはリピータハブ同士の接続に使用される。高額だが低損失と長いセグメントということからあまり普及せず、ハブ同士の接続などに利用される程度で あった。
10BASEシリーズの伝送速度10Mbpsの10倍、つまり100Mbpsの伝送速度のイーサネットを100BASEシリーズといい、 IEEE802.3uとして規格化された。10BASEシリーズにあった同軸ケーブルは無くなりT(ツイストペアケーブル)が中心になっている。 100BASEシリーズを総称してファーストイーサネットと呼ぶ。
100BASEシリーズ
規格名 | 標準 | ケーブル | ケーブル本数 | 伝送距離 |
100BASE-2 | IEEE802.3y | UTP(Cat3) | 2対4線 | 100m |
100BASE-4 | IEEE802.3u | UTP(Cat3) | 4対8線 | 100m |
100BASE-TX | UTP(Cat5) | 2対4線 | 100m | |
100BASE-FX | 光ファイバ(MMF/SMF) | 2本 | 412m(MMF)/20km(SMF) |
*MMF=マルチモードファイバ SMF=シングルモードファイバ
以下の100BASE-2,100BASE-4,100BASE-TXを総称して100BASE-Tと呼ぶ。1995年承認を受ける。
100BASE-2ではCat(カテゴリ)3のUTPケーブルを使い全2重通信を行える規格。ファーストイーサの中では100BASE-TXが最新の企画と思われがちだが、100BASE-2のほうが新しい規格。IEEEがとりきめた速度の順位では実は100BASE-TXよりも100BASE-2の方が順位は上になっている。技術がかなり複雑だったため100BASE-2の製品は普及せず、100BASE-2の技術は1000BASE-Tに利用されることになる。
カテゴリ3の4対8線UTPケーブルを使い半2重通信のみ行える規格。100BASE-TXとの相違点は符号形式が異なり
4B5B符号化MLT-3符号化→8B6T(8 Binary to 6 Ternary)符号化
であること(下図参照)。8B6T符号は2値8桁の符号をそれぞれ3値6桁の符号変換を行う。ケーブルはカテゴリ3を使用し10BASEシリーズと互換性を持たせたが半二重通信であったため中途半端な規格になってしまった。
現在最も普及しているイーサネット規格。Cat5のケーブルのうち2対4線を使い全二重通信をする。通信方式は4B5B(4Binary to 5 Binary)符号とMNT-3(Multilevel-Threshold-3)符号。
4B5B符号はもとの2値4桁の符号を2値5桁の符号に変換する、つまり4bitを決まった法則にもとづいて5bitに変換するというもの。そのため5/4倍、つまり100M→125Mbpsに上がることになる。4B5B符号には制御符号(信号の開始、終了)などが割り当てられており、制御しやすくなっている。MLT-3符号はもとの2値符号を3つのレベル(+1,0,-1)に割り当てたもの。これにより3/2倍される。
光ファイバを使用したファーストイーサネット規格。MMF(マルチモードファイバ)を使用した場合、全二重のものと半二重のものとがありSMF(シ
ングルモードファイバ)の場合、全二重通信となる。使用波長が850nm,1300nmとがある。光といっても100BASE-TXとの相違点は符号化が
MLT-3符号化→NRZI(Non-Return Zero Invert on Ones)符号化のみ。(上図参照)
光イーサと呼ばれ、10BASE-Fで既に光ファイバが使われていたのだが、100BASE-FXの方が有名になってしまったため光イーサと呼ばれることもある。
今現在100BASEシリーズのイーサネットが最も普及しており、たいていのパソコンは100BASE-TXに接続可能である。
10BASE-F,100BASE-FXと既に光ファイバを使ったイーサネットは出ているが1000BASEシリーズ10GBASEシリーズになるとさらに多くなってくるのでここで光通信の基本を説明する。
光通信において問題になることが2つある。ひとつは伝送距離が長い場合送信した光信号が弱くなってしまうこと、もうひとつは光信号が光ファイバ内で乱反射してしまい受信がバラバラになってしまうことがある。光信号が弱くなることを「損失」、反射による光信号の乱れを「分散」という。
光通信では使用する波長の範囲がきまっている。
波長によっても性質が異なり、1.3μmでは分散がない。これをゼロ分散波長という。また1.55μm付近では損失が少なく長距離伝送に適している。
光ファイバには大きく分けて2つある。すでに出てきているがMMF(MultiModeFiber)とSMF(SingleModeFiber)である。マルチモードは反射をしながらファイバの中を進み、シングルモードは反射せずファイバの中を進む。マルチモードは安価で扱いやすいが反射をすれば光の信号が分散してしまうので長距離通信には向かない、一方反射をしないシングルモードは反射が無いように作るため高価で曲げにくい。そのため長距離通信ではシングルモードを使いビル内などの配線にはマルチモードを使用することが多い。
シングルモードでは波分散が発生しないためゼロ分散波長1.3μmを使用しないように思うかもしれない。しかし1.3μmでは損失も少ないため基本的にシングルモードファイバを使用した場合、長距離通信と考えるため損失も少ない1.3μmを使用することもある。
以下に一覧を示す
規格名 | 光ファイバ | 使用波長 |
10BASE-F | MMF | 850nm |
100BASE-FX | MMF/SMF | 850nm/1300nm |
1000BASE-SX | MMF | 770nm〜860nm |
1000BASE-LX | MMF/SMF | 1270nm〜1355nm |
1000BASE-LH | SMF | 1550nm |
1000BASE-ZX | SMF | 1550nm |
なお、10GBASEシリーズの光イーサネットはまとめて別で記す。
ギガビットイーサは100Mbpsの10倍、つまり1000Mbps=1Gbit/sの伝送が可能な規格。1000BASEシリーズと呼ばれ、様々 な規格がある。大きく分けて1000BASE-Xと1000BASE-Tという規格があり、1000BASE-Xでは100BASEシリーズにはなかった 同軸ケーブルも規格化されている。また、1000BASEシリーズから半二重通信(CSMA/CD)を使うリピータハブの製品はほとんど出ず、スイッチン グハブの全二重通信がほとんどとなっている。
1000BASEシリーズ
規格名 | 標準 | ケーブル | ケーブル本数 | 伝送距離 |
1000BASE-SX | IEEE802.3z | 光ファイバ(MMF | 2本 | 550m |
1000BASE-LX | 光ファイバ(MMF/SMF) | 550m(MMF)/5km(SMF) | ||
1000BASE-CX | 同軸ケーブル | 25m | ||
1000BASE-T | IEEE802.3ab | UTPケーブル | 4対8本 | 100m |
1000BASEの光ファイバの規格。1000BASE-SXでは850nm、1000BASE-LXでは1300nmの波長を使用する。
同軸ケーブルを使った規格。伝送距離が25mと非常に短いが同軸ケーブルのためUTPケーブルに比べ損失が少ないことや、光ファイバにくらべて安価であることから、サーバ間の接続などに利用される。
1000BASEシリーズのT規格。1999年12月承認される。使用するケーブルはCat5e以上を使用。最大伝送距離の100mの通信を行うた めにはカテゴリ6のケーブルが必要。価格が100BASE-TXとほとんど変わらなくなってきているため100BASE-TXに取って代わってきている。 また、1000BASE-Tは半二重通信と思われるようだがハイブリッド回路を搭載した全二重通信可能のものがある。Cat6以上のケーブルが必要な1000BASE-TXは普及しなかった。
1000BASE-T全二重通信のしくみ
ハイブリッド回路は受信信号に送信信号を逆位相で加えることにより対向側の送信信号を受けられるようにする。
GbitEthernetの仕組み
名称 | 1000BASE-SX | 1000BASE-LX | 1000BASE-CX | 1000BASE-T |
MAC | MACアドレス | |||
PCS | 8B/10B符号、複合化 | 8B1Q4 | ||
PMA | シリアル、パラレル変換 | 5値4組符号化 | ||
PMU | 4組に分割/5値の信号入力 | |||
MDI | 光ファイバ/MMF | 光ファイバ/MMF/SMF | 同軸ケーブル | UTP(カテゴリ5e) |
1000BASE-Tでは4対全てを使って1000Mbpsを実現していたが、1000BASE-TXでは4対8線のUTPケーブルを上り(送信) 2対、下り(受信)2対で通信を行い、1対あたり500Mbpsの帯域を持たせている。IEEEでは標準化されず、TIA/EIA-854-Aとして規格化される。1000BASE-Tよりも損失も少なく安価になるのではということで期待されたが1000BASE-Tが既に大勢を占めていたため表舞台から姿を消してしまう。まさにゴースト(影)となってしまった。
IEEEでは規格化されていないイーサネット。1000BASE-LHは1000BASE-LXのレーザ出力を上げSMFで最大50kmまで伝送可能にしたもの。1000BASE-ZXは波長を1550nmにし伝送可能距離を100kmにまで伸ばしたもの。個人ユーザ向けには見ることもないがデータセンターなどでの需要がありまさにファントム(幽霊)イーサネットとなっている。
スイッチングHUBではEtherフレーム内の送信先アドレスにより受信者のポートがわかる時ポート同士を直結させる(IEEE802.1V)。これによりこりジョンが生じなくなるので通信効率が向上する。それが今現在、最も普及している全二重通信用HUBのLANスイッチ(スイッチングハブ)である。LANスイッチは1対多数の通信もカバーできるようフラッディングと呼ばれる機能も持っている。
ブロードキャストの仕組み
10GbitEtehernetとは当初は光ファイバーの規格として登場した。1秒間に10ギガビットの情報の伝送が可能である。
通信方式はBASE-BAND方式で全二重通信である。
送信方法はMAC層から受け取ったデータをシリアル化伝送するものとWDMによるパラレル転送するものがある。なお、10GbitEtherでは従来のEthernetとは違い、LANからWANへの通信をSONET/SDHによりバックボーンで行える。このWANで利用できる規格とLANで利用
する規格は物理層が異なっており、WAN規格向けEthernetをWAN PHY(PHYsicalsublayer)、LAN規格向けをLANPHYと呼ぶ。
CSMA/CD方式を全廃。スイッチングHUBの普及により10GbEからは全てスイッチングHUBを使用し接続されるようになった。LANからWAN通信が可能になった。ただしWANの通信接続ではSONET/SDHへのフレーム変換が必要になる。
SONET/SDHは多重化技術の1つである。WAN規格の中で最も普及している。
これは電話回線を束ねて光ファイバで伝送するための規格でディジタル化した音声信号の速度(64kビット/秒)が基本単位。この整数倍の伝送速度が規格化されている。
約10Gで規格化されているのはOC-192(SDHではSTM-64)で呼ばれる。(下図参照)
伝送速度を整数倍するのに、データを多重化しフレームとして扱い、1度に送れるデータの量を増やすことで伝送速度を上げている。
なお、10Gbit/秒は以下のように求めることができる。
まず、多重化された伝送速度はきまっており、125μ(s)となっている。
又、標本化定理より1/2B=125μ(秒)。したがって、
B=8000フレームとなり、125μで1フレーム=8000フレーム/秒となる。
よって送信データ(ペイロード)では
16640byte/列×8bit/byte×9列/フレーム×8000フレーム/秒=9.5846Gbit/秒
となる。
10GbEthernetはWANでEthernetを利用できるようにするため、WAN規格の中で最も普及しているSONET/SDH技術に適応
させる。SONET/SDHフレームにEthernetのデータをのせる事で適応させているが完全に準拠しているというわけではない。
WAN PHYでは9.2942Gbpsのデータを64/66B符号化し、9.58464Gbpsとする。これを、WIS(WANInterface Sublayer)と呼ぶ方法で9.58464GbpsのSONET OC-192のペイロードに埋め込む。 SONETOC-192では、制御情報を運ぶ各種のオーバーヘッドが付けられるので、実際の伝送速度は9.95328Gbpsとなる。
イーサネットフレームには、先頭に7byteのプリアンブルと1byteのSFD(Start FrameDelimiter)が付く。また、インターギャップと呼ばれる間隔ごとにフレームは並べられ、このインターギャップの最小間隔は12バイトとなる。フレームが最小間隔で続く状態がEthernetの最大フレーム転送速度(ワイヤ・スピード)となる。このためワイヤスピードはフレーム・サイズにより異なる。
10GbEは上記のように伝送方式において従来のEthernetとは異なるが共通のMACフレーム使用している点で従来のEthernetと互換
性を持たせている。そのため、これまでのEthernetと互換性が取れるため、スイッチングHUBだけでWANとLANの接続ができる。
なお、WANとLANの接続がスイッチングHUBで出来るため、他のWAN規格などプロトコル変換機が必要な方式に比べ安価になってる。
現在の10GbitEthernetはWANとして使用され、主に企業向けという色合いが今のところ強い。ただし10GBASE-Tが規格化されたことで、今後はLANでの使用も増えるであろう。
10GBASEシリーズ
規格名 | 標準 | ケーブル種類 | ケーブル本数 | 伝送距離 |
10GBASE-EW | IEEE802.ae | 10μmSMF | 1対 | 40km |
10GBASE-LW | 10μmSMF | 10km | ||
10GBASE-SW | 50/62.5/150μm MMF | 300m | ||
10GBASE-ER | 10μmSMF | 40km | ||
10GBASE-LW | 10μmSMF | 10km | ||
10GBASE-SW | 50/62.5/150μm MMF | 300m | ||
10GBASE-LX4 | 9μmSMF/50μmMMF/62.5μmMMF | 4対 | 10km | |
10GBASE-CX4 | IEEE802.ak | 24AWG/30AWG | 4対 | 15m |
10GBASE-T | IEEE802.an | Cat6e/Cat6a/Cat7 | 4対8線 | 55/100m |
*SMF=シングルモードファイバ、MMF=マルチモードファイバ
伝送速度での分類
10GBASE-W:WAN使用の規格SONET/SDHを利用。約9.95Gbps
10GBASE-R:LAN,MAN使用の規格。10.3Gbps
10GBASE-X:低速信号を多重化した規格。3.15Gbps×4×80%(8B10B符号による伝送実行率)=10Gbps。
伝送距離による分類
10GBASE-S:300m以下
10GBASE-L:10km以下
10GBASE-E:40km以下
10GBASE-LX4では多重化技術としてWDMを採用し10Gbitを実現している。
3.15Gbps×4×80%(8B10B符号による伝送実行率)=10Gbps。
変調方式について
10GbitEtherの構造
10GBASE-S | 10GBASE-L | 10GBASE-E | 10GBASE-CX4 | 10GBASE-LX4 | 10GBASE-T | |
MAC層 | MACアドレス | |||||
RS層 | Frame/bit変換 | |||||
PCS層 | 64B/66B符号化,複合化 | 0-7,8-15,16-23,24-31bitごとに分割8B/10B符号化,複合化 | 128DSQ符号化,LDPC誤り制御 | |||
WIS層 | SONET/SDHへのフレーム化 | |||||
PMA層 | シリアル,パラレル変換 | |||||
PMD層 | 光/電気信号変換 | 信号波形 変換 | WDM多重 | PMU層/4線に分割、それぞれ16値の信号化 | ||
MDI | MMF | SMF | Twinax | MMF | UTP |
これまで紹介してきた10〜10GBASE-Tシリーズをまとめる。
10BASE-T | 100BASE-T* | 1000BASE-T | 10GBASE-T | |
認証年度 | 1990年 | 1995年 | 1999年 | 2006年 |
使用ケーブル | Cat3 | Cat3,Cat5 | Cat5e,Cat6 | Cat6,6e,6a,Cat7 |
*100BASE-Tは100BASE-T2,T4,TXを総称している
IEEEは、より対線ケーブルを用いて10Gビット/秒の伝送速度でデータを100m伝送するEthernetの規格「IEEE802.3an-
2006(10GBASE-T)」を承認(2006年7月規格標準化)。これまでのようにツイストペアケーブルの登場により価格の値下がりが始まり10Gビットイーサの普及が広がるかが注目されている。
10GBASE-Tで使われるケーブルは「カテゴリ6」(Cat6)「オーグメンテッド・カテゴリ6」(Cat6a)「カテゴリ7」(Cat7)。Cat6aは,10GBASE-T用に新たに決められたもので基本的な構造は従来の規格と共通だが,断面が縦長になり,ら旋状にねじられた構造になっている点が異なる。
Cat6aは,断面を縦長にすることで,異なるケーブル間で心線が接近するのを防ぐことで、エイリアン・クロストーク(隣り合ったSTPケーブルの間で伝わるノイズ)が乗らないようにした。Cat6aケーブルは500MHzまでの信号を通せる 。
その他のケーブルをCAT5eから示す。
ケーブルの直径
Cat6,Cat7はUTPではなくSTPである
2006年11月IEEE802委員会による会議が行われ、10GBASEシリーズを越える高速イーサネット100ギガビットイーサの標準化を目指す今後のスケジュールが発表された。それによれば2007年7月から協議が開始され2009年11月に標準化を目指すというものだった。
本章では無線LAN規格であるIEEE802.11a,gを中心に、また近く標準化されるIEEE802.11nについても述べる。
無線LANとはLAN規格の一つ。イーサネットなどとの大きな違いは、配線の必要がないこと。面倒な配線がないためオフィスや家庭などでも利用されることが多くなっている。ただし、伝送速度はイーサネット比べると遅くセキュリティ面でも問題が伴う。
無線LANのアクセス方式も基本的にはCSMAである。つまり、送りたいデータパケットがある場合
を繰り返す。
ただしこれだけでは以下の問題が起こってしまう
図のように局AとCは相互に電波は届かず局BはAとCと相互に通信できる状況を考える。
ある端末A、Cが端末Bに送信したい時、本来ならば、無線チャネルをモニタしなければならないのだがA、Cともお互いの信号をモニタ出来ない位置にあるため無線チャネルが使われていないと判断し両方とも送信してしまう。これにより送信データが衝突してしまう現象
ある端末A、CがそれぞれB、C端末に送信したい時、無線チャネルをモニタするとA、Cともに無線チャネルが使われると判断してしまい一定時間待ってしまう。実際はA→B、C→Dに送信のため衝突は起きないため待つ必要がない。
隠れ端末問題、さらされ端末問題にはRTS(request to send)パケットとCTS(clear tosend)パケットという制御パケットを用いて解決される。つまり、メッセージの交換によりメディアの排他的使用を実現する。
RTSパケットは送信したいデータがある場合、受信側の状況を知るためのパケットでパケットの内容には送信側と受信側のアドレスが入っている。もし受信側がデータの送信が可能だった場合、受信側はCTSパケットを送る。パケットの内容は受信側と送信側のアドレスが入っている。送信側はRTSパケットを送信後CTSパケットを受信できた時だけデータを送信することができる。
隠れ端末問題は受信側の状況が分からないために起こってしまう。送信データを送る端末はまずRTSパケットを送信したい端末に送ることでRTSパケットを受信した端末は他にRTSパケットが来たとしても一番早く来たRTSパケットにのみCTSパケットを送信する。CTSパケットを受信した端末のみ送信データを送信する。
さらされ端末問題も同じように相手側の状況が知ることができれば解決できることなので、RTSパケットCTSパケットのやり取りでデータの送受信を行う。
隠れ端末解消方法
以下に隠れ端末問題解消方法を示す。隠れ端末問題は端末Bに対しデータをいっぺんに送信することが問題になる。送信許可を求めるRTSパケット、送信許可を与えるCTSパケットのやり取りで解決できる。
さらされ端末問題解決方法
以下にさらされ端末問題解決方法を示す。さらされ端末問題はCSMA/CAのキャリアセンスによって起こる問題である。端末A,CはキャリアがあってもRTSパケットの送信をする。端末B,DのCTSパケットの送信でデータのやり取りを開始することができる。
規格比較
規格名 | 承認年度 | 最大通信速度 | 利用帯域 | 通信方式 |
IEEE802.11a | 1999/9 | 54Mbps | 5.2〜5.3GHz | OFDM&PSK〜64QAM |
IEEE802.11g | 2003/6 | 54Mbps | 2.4GHz | OFDM&PSK〜64QAM |
スペクトラム拡散技術:周波数帯域を広げることで扱えるデータの量を増やす技術。他の機器への干渉を少なくするため帯域を広げた分だけ電力を低くし信号を弱めている。
スペクトラム拡散技術の一つ。基本はただスペクトラム拡散しているだけだが、PN(PseudoNoise-擬似雑音)符号という、変調が早い信号を組み合わせて再度変調して送信している(これを2次変調という)。
PN符号によって2次変調した信号は広い周波数帯域に広がって送信され、受信側は広がった信号を同じPN符号で逆拡散、復調する。これにより伝送途中に信号を見つけられても単なる雑音にしか見えないため秘匿性に優れている。ちなみにPN符号を使い同じ帯域で複数の通信を行うCDMA(CodeDivisionMultipleAccess-符号分割多重接続)はこの技術を使っている。
802.11gはこの技術を採用。IEEE802.11,11bと互換性を持たせている。
通常の周波数多重では干渉(信号同士が重なること)を防ぐためガードハンド(隙間を空けている)。OFDMではそれぞれの信号の位相を合わせる(直交させる)ことで信号を重ね合わせている。マルチパスと呼ばれる妨害干渉に強い特徴がある。
OFDMの信号式は次で表される。
QAMとは(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)といい無線LAN以外にもADSLやデジタル放送などのデジタル通信で利用されている。
QAMの基本はASK(Amplitude shiftkeying:振幅変調)で振幅成分を利用するためノイズに弱いが他の技術余地も効率よく波形パターンを作ることができる。位相変化による4パターンと振幅変化による4パターンを組み合わせ16パターンの波形を作れることができる。
QAMではパターンの判定が難しくならないようにするため格子状に等間隔に並べられている。下図のように同じ周波数で角度の異なる搬送波を合成し波形パターンを作っている。あとは8段階の電圧を用意するだけで64QAMパターンが作れる。
IEEEが2007年に標準化予定の無線LAN規格。100Mbpsの通信速度、802.11a,gとの下位互換性をもたせる。MIMO(Multi-InputMulti-Output)と呼ばれる技術を使い複数のアンテナで送受信を行い高速な通信を実現させる。既にMIMO技術を使い100Mbpsの通信速度を実現した無線LAN製品があるがこれらはIEEE802.11nに準拠するかは定かでない。2006年3月にDRAFT ver1.0が策定されている。
予定では500Mbpsまでの通信速度を実現する予定。
複数のアンテナにそれぞれ異なった送信データを送り受信側で合成することで通信の高速化を図ることが出来る技術。理論上では2本であれば2倍、3本であれば3倍となる。また、複数のアンテナから送受信を行うため通信障害の多い場所では複数の経路が確保でき通信が安定させることができる。
上図の例(送信アンテナ2本、受信アンテナ2本)で計算をすると
y1=a1x1+a2x2
y2=b1x1+b2x2
となる。ここで定数a1,a2,b1,b2は電波が届くまでの信号の変化である。これらは利用環境で決まり、このデータをあらかじめ受信側に知らせておくことでy1,y2からx1,x2を求めることが出来る。
MIMOでは壁に反射した信号も受信することができこれまでの規格IEEE802.11a,gなどでは通信ができなかった場所でも通信ができる可能性があるため実用性が高い。
初期の無線通信における暗号技術にはWEP(Wired Equivalent Privacy )がありIEEE802.11bに採用されていた。ただしこの暗号技術はいくつもの弱点が見つかっており既に信頼性が低くなっている。
このため数十分傍受すると完全に解読できてしまう。WEPの弱点を補うために作られた暗号技術WPA(Wi-Fi ProtectAccess)である。Wi-Fi Allianceが発表した。
この変更をした暗号化をTKIP(Temporalkey IntegrityProtocol)方式という。つまりWEPの弱点である鍵情報が何度も流れることを改めたのがWPA(TKIP方式)である。
WPA-PSKとはWPAでのTKIP方式において共有キーを定期的に変更する際、外部の認証サーバを使うもののことを言う。なお、外部認証サーバにはIEEE802.1xが使われることになる。
IEEE802.1xはもともとはPPPでのユーザ認証に使われる様式のこと。認証されたユーザのみの通信を許可し認証要求以外の通信を許さない。無線LANではIEEE802.11bのときWEPキーの管理やユーザの認証の仕組みがないことからIEEE802.1xを取り入れた。IEEE802.1xは複数のプロトコルからなっており、それを以下に示す。一番上の段ではEAP上で使用可能な認証プロトコル。EAPはPPPを拡張したプロトコル。EAPOLはEthernet無線LAN上で使用するためのプロトコル。
TLS(Transport Layer Security) | TTLS(Tunneled TLS) | MD5 Challenge | OTP(One Time Password) | その他 |
EAP(PPP Extensible Authentication Protocol) | ||||
PPP(Point to Point Protocol) | EAPOL(EAP over LAN) | |||
IEEE802.3 | IEEE802.11b/g/a | その他 |
TLS,TTLS,PEAPのプロトコルではクライアントとサーバでの相互認証が行われる。
TLS、TTLS、PEAPによってWEPの欠点であるWEPキーの更新を行うとができるこれをダイナミックWEPという。以下にTLSをつかったIEEE802.1x認証の流れを示す。
本書の目的は次世代高速LAN技術を理解することだった。
有線LANでは10GbitEthernetが普及しつつあり、特に10GBASE-Tの標準化により今後は本来のLANの領域での普及が期待される。た
だし、今現在の我々が使用するパソコンなどでは10Gbit/sという伝速度はPCIバススピードが5G程度のため処理しきれず、パソコンで
10GbitEtherを使えるようになるにはパソコンの技術発展が待たれることになる。また今後IEEEでは100GbitEthernetを標準化していくことが決まっており既に光ファイバを使用し必要になりそうな具体的な技術も議論されだしておりGbitの領域からTbitの領域達することは想像に難しくない。
無線LANでは2007年度中にIEEE802.11nが標準化される見込みになっており、本書でも述べたMIMO技術のほかにMACフレームのボディフレーム部分に複数のデータフレームを多重化して入れる技術があり、このMIMO技術と多重化技術により最大600Mbps伝送速度が作り出される。多重化にはMSDU(MacServiceDataUnit)でのアグリケーション、MPDU(MacProtocolDataUnit)でのアグリケーションによってペイロードが最大で65535byteになる。通常のペイロードが2304byteであるからおよそ30倍である。このIEEE802.11nが標準化されれば最大伝送速度600Mbpsとなり現在有線LANで多数を占めている100MBASE-Tよりも速くなるためLANは有線から無線の時代を迎える可能性がある。オフィスなどの配線の面倒さを考えれば無線LANが有利になる。しかし無線LANにはセキュリティ面での不安があり本書でも述べた最新の暗号化技術のWPAやWPA2でも既にいくつかのセキュリティホールが指摘されており、利用される場所がオフィスや研究機関など機密性を必要とするLANでは有線LANを上回ることが難しい。