4×4オセロ全手解析

ネットワークシステム研究室
指導教員:坂本 直志
10EC065:鈴木 康太郎

目次

1. はじめに
2. 準備
2.1. オセロとは
2.2. 8×8オセロと4×4オセロの違い
2.3. 先行の研究
2.4. 疑問点
3. 研究結果
4. まとめ
5. 参考文献
6. 付録(ゲーム木)

1.はじめに

「4×4オセロ」とは長谷川五郎氏考案のオセロゲームの盤面を4×4の16マスに縮小したものである。 本研究では、4×4オセロの解析をする際に、プログラミングを使い解析するのではなく、実際に人間の手で石を並べ、ゲーム木を作成し解析を行う。プログラミングを使うのではなく、人間の手で解析する事により、局面一つ一つに意味を見いだす。そして、人間の手で並べたからこそできる、重要な局の発見、戦略、定石などを解説し報告する。

また、オセロは「覚えるのに一分、極めるのに一生」と言われ、ゲーム性はいたってシンプルであるが、奥がとても深く、小さな子どもから大人、そしてお年寄りまでが一緒に対戦して楽しめるゲームである。通常のオセロでは8×8の計64マスの盤面を用いるが、本研究で使用するオセロは4×4の16マスに縮小したものを用いるため、終局までの手数が少なく、起こりうる局面もとても少ない。本論文は『覚えるのに一分、極めるのにこの論文を読む』を目標に作成した論文である。

準備

2.1.オセロとは

オセロ (Othello) とは、2人用のボードゲーム。交互に盤面へ石を打ち、相手の石を挟むと自分の石の色に変わる。最終的に石の多い側が勝者となる。単純なルールながらゲーム性は奥深いとされており、“A minute to learn, a pfetime to master”(覚えるのに1分、極めるのに一生)をキャッチフレーズとするゲームであり、考案者は長谷川五郎氏である。

基本的なルール

図1のような8×8=64のマス目で構成された盤面を用いる。 石は両面が白と黒になっており、黒のプレイヤーは黒い面で、白のプレイヤーは白い面で石を打つ。 図1のように、まず中央の4マスに白と黒の石をそれぞれ2個ずつ互い違いに置き、黒が先手、白が後手となる。

図1

図1.オセロ初期配置図

石を打つとき、縦・横・斜め方向に相手色の石を自色で挟み、挟まれた石を自色に返す。図2左図の(1)〜(4)が黒の打てるマスである。相手の石を返すことができないマスに石を打つことはできない。実際にに黒を打つと図2右図のようになる。

図2

図2.オセロの返し方図

打てるマスがない場合はパスとなり、パスの回数に制限はない。返せる石がある場合、パスをすることは認められない。石が盤面の64のマス目を全て埋め尽くした時点、あるいは打つ場所が両者ともなくなった時点でゲーム終了となる。

ゲーム終了の時点で、盤面に多くの石を有しているプレイヤーが勝者となる。

また、ゲーム理論では二人零和有限確定完全情報ゲームに分類される。

二人零和有限確定完全情報ゲームとは

二人零和有限確定完全情報の単語一つ一つに意味がある。

二人
ゲームを行うプレイヤーが二人のゲーム 。
零和
勝ちを1、負けを−1、引き分けを0とした時、全プレイヤーの利得の合計が0となるゲーム 。
有限
そのゲームにおける各プレイヤーの可能な手の組み合わせの総数が有限であるゲーム 。
確定
プレイヤーの着手以外にゲームに影響を与える偶然の要素が入り込まないという意味 。
完全情報
各プレイヤーが自分の手番において、これまでの各プレイヤーの行った選択(あるいは意思決定)について全ての情報を知ることができるゲーム。

二人零和有限確定完全情報ゲームの特徴は、理論上は完全な先読みが可能であり、双方のプレイヤーが最善手を打てば、必ず先手必勝か後手必勝か引き分けかが決まる。実際には選択肢が多くなると完全な先読みを人間が行う事は困難であるため、ゲームとして成立する。囲碁や将棋、チェスなどもこれに分類される。

2.2 8×8オセロと4×4オセロの違い

本研究では、8×8の普通のオセロではなく、4×4の盤面のオセロを使用している。

図3

図3.8×8オセロと4×4オセロの違い図

基本的なルールは8×8オセロと同様である。

違いの大きな特徴は,終局まで8×8オセロは最大でも先手後手合わせて60手だが、4×4オセロでは最大でも先手後手合わせて12手である。

2.3 先行の研究

津田は後手必勝であることを発見した[1]。また、後手必勝を証明する際、PCを使いゲーム木探索を行っている。どのようにゲーム木探索を行っているのか以下に示していく。

評価値とは

思考プログラムの基本は、局面がどの程度自分にとって有利か点数を付ける(評価する)ことである。この点数を評価値という。局面の有利度を適切に評価することができれば、自分の打てる手のうち、最も評価値の高い局面を出現させるような手を選択すればよいことになる。

ここでは8×8オセロを例に挙げ、評価値について説明する。

図4

図4.評価値説明図

図4は8×8オセロのマスに評価値をつけたものである。

この図から、角のマスは評価値が高く、角のまわりのマスは評価値が低いことがわかる。しかし、これには注意点がある。8×8オセロゲームでは、序盤は角のマスは重要であるため評価値は高いが、終盤になるほど評価値が低くなる傾向がある。このように、8×8オセロでのマスの評価値は、局面によって変動する。つまり、評価値とは必ずしも真実を表しているものではないことがわかる。

そのため、8×8オセロでは、評価値をマスからだけではなく、石の位置や「序盤」「中盤」「終盤」などを考慮し設定する必要があることがわかる。局面に置かれている駒の位置・数などだけから算出した評価値を静的評価値、算出する関数を静的評価関数と呼ぶ。「静的」とはここでは先読みをしていないことを意味する。通常、静的評価関数だけで適切な局面評価を行うことは困難である。そのため、先読みを実現するのがゲーム木探索である。

また、通常評価値は正確には計算できないが、コンピュータで有力な手を見つけるためには重要な情報である[2]。

ゲーム木探索とは

図5

図5.ゲーム木説明図

オセロに限らず、多くのゲームで行われている探索について説明する。

探索とは、現在の局面を最初として、自分の手および相手の手によって、今後局面がどう展開するかを考え、もっとも得になる手を予想する作業である。探索の様子を図であらわすために、「ゲーム木」(図5)を考える。このゲーム木図では、局面を節点(図の丸と四角)であらわし、手を枝(丸と四角を結ぶ線)であらわす。図では、四角は自分の手番のときの局面(以下自局面と呼ぶ)をあらわし、丸は相手の手番のときの局面(以下相手局面)をあらわしている。一番下の節点を葉と呼ぶ。図で葉に書かれている数字は、その局面での評価値をあらわしている。(高い方が自分にとって有利だとみなす)

ミニマックス法とは

図6

図6.ミニマックス法説明図

次の手を選ぶ方法として、ミニマックス法を説明する。

現在の局面から、数手先(図6では3手)の局面をすべて調べ、評価したとする。この評価値から、どのようにして次の手を選ぶのか決める方法をミニマックス法という。これは 相手が自分にとってもっとも不利になるような手を打ってくると仮定して、最善の手を探す方法である。

図6では葉以外の節点にも数字が書かれている。これは各節点での評価値をあらわし、次の規則に従っている。

  1. 節点が自局面のとき=その子節点の評価値のうち最大の値
  2. 節点が相手局面のとき=その子節点の評価値のうち最小の値

赤または青の線は選んだ手をあらわしている。この規則に従って下から順に各節点の評価値を決めれば、現在の局面の評価値およびどの手を選択すればよいかが決まる。

ミニマックス法では、先読みの手数が増えるごとに、評価しなければならない局面の数が指数関数的に増大する。そこで、評価する局面を減らすための方法がある。

αβ法とは

図7

図7.αβ法説明図

図7はαβ法によって各節点が評価づけられたゲーム木を示す。説明しやすいように節点に名前をつけている。αβ法での探索手順は、ミニマックス法と同じである。

ここでは、図の左側から探索していくとする。すると、節点Pを探索した後、節点Qは探索する必要がなくなることがわかる。理由は、まず、節点Pの評価値が7なので、節点Gの評価値が7以上になる。節点Fの評価値は6で、7より小さいので、この時点でBの評価値は6に決まるからである。このように、ある節点の評価値がある値以上になるために探索を打ちきることをβカットという。

次は、節点Hを探索した時のことを考える。このとき、節点Cの評価値は5以下になる。 すると、節点Bの評価値が6なので、節点Cの局面になるような手は採用されないことが決まり、 節点Iより先の探索が打ちきられる。今度は、ある節点の評価値がある値以下になるために探索を打ちきっている。これをαカットという。

αカットおよびβカットによって無駄な探索をしないようにする方法をαβ法という。

このような方法を使い津田の研究では、後手必勝などを証明している[3]

2.4. 疑問点

実用的に用いられる評価値は、計算量を減らすために基本的には近似アルゴリズムで計算するため、あらゆる局面で最善手を選ぶことができない。また、評価値の計算方法は無限にある。そのため、定石とコンピュータの手は必ずしも一致しないのではないのか。

実際のコンピュータプレイヤーはもっと様々なアルゴリズムを使っている。特に用いられるのは、実際の有効手が多く記憶されているデータベースを使う方法など。

人もコンピュータと同じようなことを行い打つ手を決めるが、コンピュータの場合には問題がある。 それは、人の場合は、実力や心理状態に応じて評価する手段が異なるが、コンピュータの場合は、相手の手も自分と同じ評価関数を用いて探索を行っている点。また、人の場合は、最善手を取らずに次善手(2番目に良いと判断した手)をあえて打ち、相手を惑わす場合もある。

コンピュータではなく、実際に人間の手でゲーム木を作成し、感じること、また枝切りされた局の中からも、面白い局や興味深い局を発見する。

3. 研究結果

研究内容

実際に人間の手でゲーム木を作成し、勝てる条件や感じること、また枝切りされた局の中からも重要な局を見つけ出す。

また、人間の手で作成したからこそできる意味づけ、解説、定石の発見などをしていく。

マスの表現

作成したゲーム木ではオセロのマスを以下のように表現した。

図8

図8.マスの説明図1

図9

図9.マスの説明図2

例としては、図9の☆のマスをa1、×のマスをb4と表現する。

作成したゲーム木の条件

1手目は反転、対称の関係性よりどの場所に打っても本質的な手筋は変わらない。従って、第一手目はa2に打つこととする。

図10

図10.1手目

4×4オセロでは2手目(白の1手目)に角に打つことができる。角のマスは、もう取られることのない不変のマスなので、一般的にも評価値の高いマスと考えられる。また、8×8オセロでも定石の1つに角のマスの確保がある。従って、有効な定石を探す意味において、2手目(白の1手目)では角を確保する。

a1に打つこととする。

図11

図11.2手目

以上のように全ての手のうち、さらに始めの2手を固定して、それ以降の手を全て列挙し、有効な手筋などを調べた。

その結果、3390局のゲームが導け、以下の勝敗となった。

     
表1.戦績
443勝 2768敗179分け
2768勝 443敗179分け

次に先読みをし、お互いが最善手を打った場合、どうなるのか、順を追って説明していく。

・発見した興味深い局1

図12

図12.発見した興味深い局1

図12のように、1手目黒a2→2手目白a1→3手目黒d3→4手目白d4に打つと、この後に黒、白がどのように打っても結果は白の勝ちとなる。この結果から、この局での3手目黒のd3は必敗手だということがわかる。

発見した興味深い局2

図12

図12.発見した興味深い局2

図13のように、1手目黒a2→2手目白a1→3手目黒c4→4手目白d4に打つと、この後に黒、白がどのように打っても同様に結果は白の勝ちとなる。この結果から、この局での3手目黒のc4も必敗手だということがわかる。

分析結果1

発見した局1と2の結果から3手目黒の打つべき場所が決まってくる。

図14

図14.3手目黒の配置図

図14からわかるように、3手目黒は1(b1)、2(d3)、3(c4)に打てるのだが、発見した局1と2で示したように、2(d3)、3(c4)に黒が打つと、次の白の1手によって勝敗が決まってしまう。よって、3手目黒は、1(b1)に打つべきであることがわかる。

このようにして、お互いの最善手は決まっていく。

分析結果2

興味深い局1と2にはある共通点があることがわかる。

図15

図15.興味深い局1と2の共通点

図15は、興味深い局1と2で紹介した白の勝利が決まる局面なのだが、この2つの局面には、どちらの局にも共通することがある。それは、白が角の対極a1とd4を確保していることである。

また、分析結果1で3手目黒の最善手をb1だと示した。

図16

図16.3手目黒の最善手結果

図16はb1に打った結果である。3手目黒がb1に打った後のゲーム木をみると、この局以降、図14の共通点同様に白が角の対極a1とd4を確保した局は全て白の勝ちであることがわかった。つまり、3手目に黒がb1に打った後、黒白はそれぞれ次のようにしなければならない。

見つけた有効な戦法

戦法1

  1. 黒は白にd4を打たせない。
  2. 白はd4が打てる時にはd4に打つ。

発見した興味深い局1、2、分析結果1、2からこの戦法が有効であることがわかる。

戦法2

不変の石の確保

不変の石とは以下のような石を言う。

図17

図17.不変の石

図17を例としてみると、角のマスは縦横斜めのどの方向からも挟むことをできないので変化しないマスであることがわかる。よって、a1、a4、d4の石は角のマスの石であるので不変の石である。

次に、b1、c1の石に着目すると角のマスa1の白石と、b1、c1の白石が一列に繋がっていることがわかる。このように角のマスと同色の石が一列に繋がり合っている石も不変の石である。

次にa2、a3の石に着目すると、角のマスと同色の石が一列に繋がり合っていないがこの縦の一列は全てのマスが埋まっているため変化させることができないことがわかる。よってこのa2、a3も不変の石である。

確保の逆に、不変石を確保させない手も有効である。

戦法3

相手の打てるマスを減らす。

相手の打てるマスが多いと、戦局を左右できる可能性を上げてしまうためである。

1、2、3の順で優先順位の高い戦法である。

この戦法を利用し、お互いが最善手を打った時の局を解説していく。

対局解析

1手目(黒1手目)の決定

図18

図18.初期配置

1手目(黒1手目)は図18より、1(b1)、2(a2)、3(d3)、4(c4)に打てる。しかし、反転、対称の関係性よりどの場所に打っても変わらない。

また、作成したゲーム木の条件により、a2に打つ。

2手目(白1手目)の決定

図19

図19.2手目の決定

2手目(白1手目)は図19より、(a1)、(c1)、(a3)に打てる。(a1)、(c1)、(a3)の中で(a1)は角のマスである。オセロゲームで角のマスは不変のマスであるので評価値が高いマスだと考えられる。

また、作成したゲーム木の条件より、a1に打つ。

3手目(黒2手目)の決定

図20

図20.3手目の決定

3手目(黒2手目)は図20より、(b1)、(d3)、(c4)に打てる。

黒が(b1)、(d3)、(c4)に打つと、以下のようになる。

図21

図21.(b1)に打った時

図22

図22.(d3)に打った時

図23

図23.(c4)に打った時

ここで図22、図23に着目すると、次の手の白はd4、つまり角マスa1の対極のマスに打てることがわかる。分析結果で示した通り、角マスの対極a1とd4を確保した局は全て白の勝ちである。

よって、(d3)、(c4)に黒は打ってはいけない。従ってb1に打つ。

4手目(白2手目)の決定

図24

図24.4手目の決定

4手目(白2手目)は図24より、(c1)、(a3)に打てる。しかし、反転、対称の関係性よりどちらのマスに打っても変わらない。

ここでは、(c1)に打つとする。

5手目(黒3手目)の決定

図25

図25.5手目の決定

5手目(黒3手目)は図25より、(d1)、(d2)、(d3)、(d4)に打てる。

黒が(d1)、(d2)、(d3)、(d4)に打つと、以下のようになる。

図26

図26.(d1)に打った時

図27

図27.(d2)に打った時

図28

図28.(d3)に打った時

図29

図29.(d4)に打った時

ここで図28に着目すると、次手の白はd4、つまり角マスa1の対極のマスに打てることがわかる。分析結果で示した通り、角マスの対極a1とd4を確保した局は全て白の勝ちである。

よって、(d3)に黒は打ってはいけない。

また、白が角マスの対極a1とd4を確保した局は全て白の勝ちであるため、黒がd4の角のマスに打ち、白が角マスの対極a1とd4を確保させないようにする手は有効であると考えられる。従ってd4に打つ。

6手目(白3手目)の決定

図30

図30.6手目の決定

6手目(白3手目)は図30より、(a3)、(a4)、(b4)、(c4)に打てる。

白が(a3)、(a4)、(b4)、(c4)に打つと、以下のようになる。

図31

図31.(a3)に打った時

図32

図32.(a4)に打った時

図33

図33.(b4)に打った時

図34

図34.(c4)に打った時

図31を見ると、白は不変石a2,a3を確保でき、次手の黒はd1の一か所にしか打てないことがわかる。ただ、d1は不変のマスなので注意する必要があることがわかる。

図32を見ると、白は不変石a4を確保できる。しかし、次手の黒はd2、a3、c4の3か所に打てる。そして、a3に打った場合はa2、a3の二か所を不変石として確保されてしまうことがわかる。また、黒がc4に打った場合もc4を不変石として確保されてしまうことがわかる。よって、白の手は(a3) 、(a4)の順で有効であることがわかる。

図33を見ると、白は不変石を確保できていない事がわかる。また、次手の黒は、d2、a3、c4の3か所に打つ事ができ、黒がc4に打つと、c4を不変石として確保されてしまうことがわかる。よって、白の手は(a3) 、(a4)、(b4)の順で有効であることがわかる。

図34を見ると、白は不変石を確保できていない事がわかる。また、次手の黒は、d1、d2、d3、b4の4か所に打つ事ができ、黒がd1に打つと、d1を不変石として確保されてしまうことがわかる。また、黒がd3に打つと、d3を不変石として確保されてしまうことがわかる。黒がb4に打った場合では、b4、c4を不変石として確保されてしまうことがわかる。よって、白の手は(a3)、(a4)、(b4),(c4)

以上の結果より、白の手は(a3)が最も有効であることがわかる。従ってa3に打つ。

7手目(黒3手目)の決定

図35

図35.7手目の決定

7手目(黒3手目)は図35より、(d1)に打てる。打てるマスが1マスだけなので、打つ場所は決まってしまう。したがってd1に打つ。

8手目(白4手目)の決定

図36

図36.8手目の決定

8手目(白4手目)は図36より、(d2)、(d3)、(b4)、(c4)に打てる。

白が(d2)、(d3)、(b4)、(c4)に打つと、以下のようになる。

図37

図37.(d2)に打った時

図38

図38.(d3)に打った時

図39

図39.(b4)に打った時

図40

図40.(c4)に打った時

図37を見ると、白は不変石を確保できない。また、次手の黒はd3の一か所にしか打てないことがわかる。そして、d3に黒が打つと、d2、d3は不変石となることがわかる。

図38を見ると、白は不変石を確保できない。また、次手の黒は、d2、a4の2か所に打てる。黒がd2に打った場合はd2、d3の2か所を不変石として確保されてしまうことがわかる。また、黒がa4に打った場合はa4を不変石として確保されてしまうことがわかる。よって、白の手は(d2) 、(d3)の順で有効であることがわかる。

図39を見ると、白は不変石を確保できていない事がわかる。次手の黒はa4の1か所にしか打てない。黒がa4に打った場合はa4を不変石として確保されてしまうことがわかる。図37の結果と比べると、次手黒の不変石の確保数の違いがあり、b4に打った時のほうが良いことがわかる。よって、白の手は(b4)、(d2) 、(d3)、の順で有効であることがわかる。

図40を見ると、白は不変石を確保できていない事がわかる。また、次手の黒は、a4、b4の2か所に打つ事ができ、黒がa4に打つと、a4を不変石として確保されてしまうことがわかる。また、黒がb4に打つと、b4、c4の2か所を不変石として確保されてしまうことがわかる。この結果は、図38の結果とほぼ変わらない。また、図38の盤面もとても似ていることがわかる。よって、白の手は(b4)、(d2) 、(d3)=(c4)の順で有効であることがわかる。

以上の結果より、白の手は(b4)が最も有効であることがわかる。従ってb4に打つ。

9手目(黒の5手目)の決定

図41

図41.9手目の決定

9手目(黒5手目)は図41より、(a4)に打てる。打てるマスが1マスだけなので、打つ場所は決まってしまう。したがってa4に打つ。

10手目(白の5手目)の決定

図42

図42.10手目の決定

10手目(白5手目)は図42より、(d2)(d3)(c4)に打てる。

白が(d2)(d3)(c4)に打つと、以下のようになる。

図43

図43.(d2)に打った時

図44

図44.(d3)に打った時

図45

図45.(c4)に打った時

図43を見ると、白は不変石を確保できない。また、次手の黒はd3、c4の2か所に打てることがわかる。黒がd3に打つと、d2、d3を不変石として確保されてしまう。また、黒が、c4に打つと、b4、c4を不変石として確保されてしまう。

図44を見ると、白は不変石を確保できない。また、次手の黒はd2、c4の2か所に打てることがわかる。黒がd2に打つと、d2、d3を不変石として確保されてしまう。また、黒がc4に打った場合はb4、c4を不変石として確保されてしまうことがわかる。図43と図44の結果を比べると結果の意味としては似ているが、盤面には違いがあり、この先のゲーム木を見てみると、図43の先には黒の勝てる手があるが、図44の先には黒の勝てる手がないことがわかった。よって、(d3)、(d2)の順で有効であることがわかる。

図45の結果を見ると、白は不変石として、b4、c4を確保していることがわかる。また次手の黒は打てる場所がない。その次に白が打てる場所もないので、終局となり、白が勝つ。よって、白の手は(c4)、(d3)、(d2)の順で有効であることがわかる。

以上の結果より、白の手は(3)(c4)が最も有効であることがわかる。従ってc4に打つ。

終局

黒:3石 

白:11石

白の+8石勝ち

図46

図46.最善手を打ちあった時のゲーム木

この結果より、お互いが最善手を打った時、白が+8石勝ちであることがわかった。

4.まとめ

既存の4×4オセロの研究ではプログラミングを使っていたが、本研究ではプログラミングを一切使わずに、人間の手で1からゲーム木を作成した。その結果、枝切りされてしまった局や手の中にも有効な戦略(白は対極の角を確保するなど)をみつけ、証明することができた。また、人間の手で作成したからこそ、局の分析、解説などを詳しくできたと思う。

4×4オセロは、黒が必敗であることはわかっているが、各場面で手の良し悪しを検討する事で以下のことがわかった。勝敗を決める場所(d4)があり、ここをどちらが取るかが重要となる。これは従来の評価値を裏づけるものである。一方で中盤までの取る石の数はそこまで重要ではない。そのため「なるべく多く取る」のような戦略は意味がない。相手に重要なマスを取らせない方法として、相手が打てる場所が少なくなるような手を選んだり、角などの以後全く返せない石を増やす戦略がある。

分析結果では、圧倒的に白が有利であることがわかった。しかし、お互いが常に最善手ではなく、1手でも悪手を打つと戦局が変わってしまうことがあることがわかった。例としては、10手目(白5手目)の決定の時に、白が最善手ではなく、1番の悪手の手を打ってしまったときだ。ここでの悪手は黒の勝ちにしてしまう。このように、悪手を1度でも打ってしまうと戦局が反転し、黒が有利になるケースがあることがわかった。

また、最善手をお互いに打った時、黒は4つの角のうち3つの角を確保しても勝てなかった。ゲームの序盤に角を取ると、不変石を作りやすくなるので、ゲーム序盤での角の確保は重要であるが、終盤ではより多くの不変石が取れるマスが多くなるので、評価価値の高いマスがでてくる。このため、角のマスは不変のマスであるため、重要なマスだと考えられるが、必ずしも優先すべきであるとは限らないことがわかった。

お互いが最善手を打った時、白は常に攻める考え方ができたが、黒は守りの考え方しかできなかった。4×4オセロでは、8×8オセロよりもマスが少なく、お互いに打てる回数が少ない。白は常に攻める考え方ができたが、黒は守りの考え方しかできないという状況は、マスが少ない4×4オセロにおいて大きな影響を及ぼすと感じた。また、その影響こそが白が4×4オセロにおいて圧倒的有利であるという根拠に繋がると思った。

本研究の反省点としては、2手目(白の1手目)に角を打たない場合のゲーム木を作成できなかったことだ。今後は、白が2手目に角を打たないというミスをした場合のゲーム木を検証しさらなる局面の変化をとらえたい。

5.参考文献

[1] ビットボードを用いた 4x4 オセロ 完全解析(http://vivi.dyndns.org/vivi/docs/puzzle/othello4x4.html)
[2]オセロ(リバーシ)の作り方(アルゴリズム) 〜石の位置による評価〜(http://uguisu.skr.jp/othello/5-1.html)
[3]オセロプログラムの作り方(http://hp.vector.co.jp/authors/VA015468/platina/algo/)
[4]著者:Seal Software 「リバーシのアルゴリズム C++ Java対応: 「探索アルゴリズム」「評価関数」の設計と実装」出版社:工学社、2003年