サッカー試合に対するTwitter盛り上がり分析

目次

1 はじめに

2022年11月から12月にかけて、世界でサッカーワールドカップが行われた。それは日本でも大きな賑わいを見せ、視聴率調査を行う「ビデオリサーチ」によると、2022年のリアルタイム視聴率TOP3全てにおいてワールドカップが独占した。また最近では、「ABEMA」、「DAZN」、「WOWOW」、「スカパー!」などといった様々な動画配信サービスでJリーグはもちろん、欧州をはじめとした多国のリーグを観ることが可能になった。このように、近年、日本だけでなく世界でサッカーは大きな盛り上がりを見せている。この盛り上がりはSNSでも見せており、特にTwitterでは海外の有名チームがしばしばトレンド入りし、ワールドカップ期間中においては毎日のようにサッカーに関するものがトレンド入りをしていた。このことから、Twitterは多くのサッカーファンから利用されており、試合の流れをTwitterから追うことも可能であることが分かった。

本研究では、近頃行われたワールドカップを対象に、Twitterにおけるサッカーの試合中のツイート数を取り、グラフ化することによってどのような盛り上がりを見せるのかを分析する。複数の試合を比較し、共通点や違い、なぜそうなったかを考察することを目的とする。

2 準備

2.1 サッカー

2.1.1 基本的なルール

サッカーは2つのチームで、得点の多さを競うスポーツである。フィールドの両端にゴールが設置されており、敵陣のゴールにボールを入れれば得点になる。各チーム11人、両チーム合計22人によって試合が行われる。また、各チーム11人のうち1人はゴールを守るゴールキーパーで、唯一プレー中に手を使うことが許されているプレイヤーである。そして、残りの10人で攻撃や守備を行う。この10人については、それぞれポジションが決められており、そのポジションによって役割分担がされている。

2.1.2 試合時間

レクリエーションや練習の場合は異なるケースもあるが、基本的にサッカーの試合は90分で行われる。前半の45分を終えると、「ハーフタイム」と呼ばれる15分の休憩時間に入る。ハーフタイムを終え、後半の45分が始まるという流れである。

2.1.2.1 アディショナルタイム

サッカーでは、反則、ボールがフィールドの外に出る、選手交代など、試合中にプレーが止められる場合が数多くある。しかし、その間も試合時間を計る時計は止められない。そのため審判の裁量で、プレーが止められていた時間を補うための「アディショナルタイム」が、前後半それぞれ45分を経過後に加算される。試合中止められていた時間は、正確に計測されているわけではない。そのため、アディショナルタイムは1分刻みで大まかに加算される。日本では「ロスタイム」という呼称が知られているが、現在はアディショナルタイムと呼ぶのが一般的である。

2.1.2.2 延長戦

90分を終えて両チームの得点が同じの場合は、引き分けである。しかし、トーナメントなど、勝敗を決する必要があるケースでは、前後半15分ずつ、計30分の延長戦が行われる。延長戦でも決着がつかないときは、PK戦によって勝敗を決めることになる。

2.1.2.3 PK戦

延長戦を終えても決着がつかない場合は「PK戦」が行われる。ゴールの正面にボールを置いて、ゴールキーパーだけが守るゴールにボールを蹴り込む。これを両チームが交互に5人ずつ行い、成功数が多いチームが勝者である。5人で決着がつかない場合は、両チーム1人ずつ蹴っていき、どちらかが失敗するまで続けられる。ちなみにPKとは「ペナルティキック」のことで、試合中でもペナルティエリア内で守備側のチームが反則を犯した場合は、攻撃側のチームにPKが与えられる。得点の確率が高いプレーなため、守備側のチームはゴール付近での反則には気をつけなければいけない。

2.1.3 その他サッカー用語

他にもサッカーには多くの用語がある。ここでは本研究で主に使用する用語と説明を表1に示す。

表1 サッカーの用語と説明

用語 説明
ファウル 反則のこと。ペナルティエリア外では相手にフリーキックがあたえられ、ペナルティエリア内では相手にPKが与えられる。
オフサイド 相手のDFが居ない状況において相手ゴール付近で待ち伏せする反則のこと。
FK(フリーキック) 相手がファウルをしたときに、その位置から再開するキックのことを指す。
PK(ペナルティキック) ペナルティエリア内でファウルを受けた際に与えられる、GKと1対1でキックが出来る状態のこと。
ペナルティエリア ゴール前に引かれた四角形のラインのこと。このエリア内で相手選手にファウルをしてしまうと相手にPKを与えることになる。
イエローカード 警告のこと。一試合で二枚貰うと退場となり、味方のチームはその後数的不利な状況で戦わなければならない。
レッドカード 試合から退場になるカード。イエローカード二枚でも提示される。
FW(フォワード) 攻撃の最前線で得点を狙う選手。
MF(ミッドフィルダー) 中央で攻守にわたって活躍する選手。
DF(ディフェンダー) GKの前で主に守備を担当する選手。
GK(ゴールキーパー) ゴールを守る役割の選手。
ハーフタイム 試合の前半と後半の間にある休憩時間のこと。
サポーター チームを応援する人の総称。場面により声を出して応援する人を指すときもあればスタジアムに集まっている人全体を指すこともある。
Jリーグ 日本のプロサッカーリーグで1部~3部リーグ構成で成る。
プレミアリーグ イングランドのプロサッカー1部リーグの名称。
チャンピオンズリーグ ヨーロッパのトップクラブが参加する欧州最高峰の大会のこと。
VAR Video Assistant Refereeの略語で、主にゴール前の攻防でファウルが発生したかをビデオで確認するシステム。欧州を中心にリーグ戦での導入が進んでおり、Jリーグでは2020年より導入されている。

2.2 FIFAワールドカップ

FIFAワールドカップは、国際サッカー連盟(FIFA)が主催する、全32か国の国代表チームによるサッカーの世界選手権大会である。サッカーの大会における世界最高峰と位置付けられ、全世界の総視聴者数は35億人を超え夏季オリンピックと並んで最も多い。4年に1回開催され、2022年のFIFAワールドカップは第22回の大会であり、本戦は2022年11月20日から12月18日までカタールで行われた。カタールは初めてワールドカップを開催し、また、中東での開催も初となった。例年は5、6月に開催するが、カタールは夏の猛暑が耐えられないため、初の冬の時期の開催でもあった。

2.2.1 大会方式

大きく2つのステップがある。まず、出場32チームを8組(各4チーム)に分ける。各組4チームによる総当たり戦を行い、上位2チームが決勝トーナメントへと進む。よく耳にする「ベスト16」というのは、この16か国のことになる。この1つ目のステップを主に「グループステージ」と呼ぶ。そして、2つ目のステップを「決勝トーナメント」と呼び、16チームが勝ち抜き戦で勝者を決め、ベスト16、ベスト8(準々決勝)、ベスト4(準決勝)、決勝へと駒を進める。今大会におけるグループステージの組み合わせを表2に示す。

表2 グループステージの組み合わせ

グループA カタール エクアドル セネガル オランダ
グループB イングランド イラン アメリカ ウェールズ
グループC アルゼンチン サウジアラビア メキシコ ポーランド
グループD フランス オーストラリア デンマーク チュニジア
グループE スペイン コスタリカ ドイツ 日本
グループF ベルギー カナダ モロッコ クロアチア
グループG ブラジル セルビア スイス カメルーン
グループH ポルトガル ガーナ ウルグアイ 韓国

2.2.2 日本代表のワールドカップ成績

  

日本代表は1998年のフランス大会でワールドカップに初出場し、グループステージ全敗で幕を閉じた。次の2002年、自国開催した日韓ワールドカップでは、グループステージ2勝1分けの好成績を残し、ベスト16の成績を収めた。その後2022年まで7大会連続でワールドカップを出場するが、グループステージ敗退とベスト16の交互を繰り返し、ベスト16から先へ進めていない。前大会のロシア大会では、決勝トーナメント1回戦でのベルギー戦で途中2点リードするも、試合終了間際に逆転ゴールを決められ、目標であったベスト8にはあと1歩届かなかった。このベスト8進出の難しさからメディア等では「ベスト8の壁」とも呼ばれる。カタール大会ではドイツ、スペインら優勝候補の強国と同グループに入ったが、次こそはベスト8と、国民からも熱い期待に包まれていた。

2.2.3

アルゼンチンが9大会ぶり3回目の優勝を果たし、アルゼンチン代表のリオネル・メッシが最優秀選手に輝いた。得点王はフランス代表のキリアン・エムバペだった。最終順位は1位アルゼンチン、2位フランス、3位クロアチア、4位モロッコという結果になった。詳しい結果は図1に示す。日本代表は、惜しくもベスト8には至らなかったが、格上であるドイツやスペインに逆転勝ちし、グループステージでの躍進や大会を通しての活躍から「ドーハの奇跡」と言われるようになった。ドーハの悲劇の1993年に日本代表が涙を飲んだ地で、29年越しに雪辱を果たした。決勝後、国際サッカー連盟(FIFA)は今大会を総括し「傑出していたチーム」としてアルゼンチン、クロアチア、モロッコ、日本の名前を挙げた。

決勝トーナメント結果

図1 決勝トーナメント結果

2.3 Twitter

Twitterとは、マイクロブログの一種で、「ツイート」と呼ばれる半角280文字、日本語などの全角140文字以内でメッセージを投稿することができる。Twitter上ではこの投稿を「ツイートする」、「つぶやく」と言う。また、画像や動画、そしてURLを使ってリンクなども添付してツイートすることも可能である。これらのツイートはタイムラインに表示される。他ユーザーのツイートは、フォローという機能を利用することによって、タイムラインに表示することができる。本研究では、リツイートを除いたツイートを対象とする。また、Twitterにはハッシュタグと呼ばれる機能があり、ワードの最初に「#」を付けてツイートするとハッシュタグになる。ハッシュタグは、検索キーワードとして使うことができ、同じ関心を持つツイートを見ることができる。ハッシュタグによる検索では、大文字と小文字は区別されない。Twitterでは、ハッシュタグを利用して、テレビ番組やイベントなどを実況ツイートとしてツイートすることがある。本研究では、ワールドカップを対象に、サッカーの試合中における1分毎のツイート数を、ハッシュタグを利用して収集する。その他、Twitterで主に使われる用語と説明を表5に示す。

表3 Twitterの用語と説明

用語 説明
ツイート Twitterにおいて、メッセージを投稿すること。
ハッシュタグ ワードの最初に「#」を付けてツイートすること。同じ関心を持つツイートを検索しやすくなる。
リツイート 自分や他のユーザーのツイートを共有すること。
引用リツイート 自分や他のユーザーのツイートを引用して、自分自身のメッセージを追加したツイートを投稿すること。
タイムライン フォローしているユーザーのツイートを、一連の流れとして時系列順などで表示する仕組み。
フォロー あるユーザーをタイムラインに表示できる仕組み。
フォロワー そのユーザーをフォローしているユーザーのこと。
リプライ 自分や他のユーザーのツイートに、メッセージを投稿するツイートのこと。
いいね ツイートに対して好意的な気持ちを示すもの。

3 分析

本研究では、ワールドカップを対象に、複数のサッカーの試合中における1分毎のツイート数を収集し、グラフ化する。そのグラフから得た共通点や違い、なぜそうなったかを考察する。今回、ワールドカップは全64試合と多いため、その中から複数の試合を選別し、分析する。

3.1 ツイートの取得方法

3.1.1 Twitter API

Twitter APIを使用することで、ツイートの取得、投稿、フォローなども行うことができる。また、自動でフォローや「いいね」をすることができる。TwitterのDeveloperサイトにアクセスして、Twitter APIの利用申請をする。手順にしたがって申請が完了すると、4種類のキー/トークン(Consumer Key, Consumer Secret, Access Token, Access Token Secret)を取得できる。

3.1.2 tw2csv

4種類のキー/トークンと、tw2csvというコマンドラインツールを紐付けると、ツイートを取得することができる。その際、botとリツイートは検索結果から除外される。得られたCSV形式データの1レコードには、ユーザーID、テキスト、フォロワー数、投稿時間などが含まれる。図2のようにコマンドを入力すると対象ツイートが取得できる。また、ツイート取得例を図3に示す。

ツイート取得のコマンド

図2 ツイート取得のコマンド

ツイート取得例

図3 ツイート取得例

本研究では、ツイートの投稿時間のカラムだけを切り取ってグラフにする。検索ワードには海外でよく使われる「#○○○●●●」(丸にはそれぞれの国の3文字国名コードが入る)を使用する。例えば、セネガルvsオランダの場合、「#SENNED」、アルゼンチンvsサウジアラビアの場合、「#ARGKSA」を入力する。

3.2 分析結果

結果のグラフの縦軸はツイート数、横軸はツイート時間を表す。縦軸は2000ツイートで揃えている。グラフの両端は試合開始から試合終了までである(アディショナルタイムを含む)。黄色の線は平均ツイート数を表す。平均を超える時間帯を取り出し、その時間帯の試合内容を表に表す。この際、意味のない時間帯(ノイズ)を取り出してしまう場合があるため、標準偏差を用いて、平均+0.5×標準偏差でより高度な盛り上がりの分析を行った。(式(1))また、1分間におけるツイート数の単位をtpm(tweets per minute)とする。さらに、平均を超えている時間帯と下回っている時間帯の比を求めた。

平均をμ、標準偏差をσ、ツイート数をX、データの個数をnとする。

式

3.2.1 セネガルvsオランダ

SENNED

図4 セネガル対オランダのグラフ

グループステージ初戦 セネガル0-2オランダ μ+0.5σ = 456 tpm

表4 セネガル対オランダの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
1:01 1:04 4 679.5 オランダのチャンス
1:05 1:05 1 586
1:09 1:09 1 489
1:12 1:15 4 530.5 セネガルGKのビッグセーブ
1:21 1:22 2 506.5 オランダのチャンス
2:34 2:34 1 520 セネガルのビッグチャンス
2:42 2:42 1 460 オランダの猛攻勢
2:44 2:48 5 783.2 オランダの先制ゴール
2:49 2:51 3 622 連続ファウルの激しいシーン
2:59 2:59 1 753 オランダの2点目

3.2.2 アルゼンチンvsサウジアラビア

ARGKSA

図5 アルゼンチン対サウジアラビアのグラフ

グループステージ初戦 アルゼンチン1-2サウジアラビア μ+0.5σ= 781 tpm

表5 アルゼンチン対サウジアラビアの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
19:35 19:35 1 806 アルゼンチンのゴールがVAR判定によって取消
20:11 20:11 1 917 サウジアラビアの同点ゴール
20:15 20:24 10 1256.6 サウジアラビアの逆転ゴール
20:54 20:55 2 924.5 アルゼンチンの猛攻撃
20:58 21:02 5 1018.8 サウジアラビアの荒いファウル
21:03 21:05 3 919 サウジアラビアの歴史的勝利が近づく
21:06 21:06 1 1582

上記以外では19:08にアルゼンチンが先制ゴールを挙げたが、僅かにμ+0.5σには届かなかった。

3.2.3 スペインvsコスタリカ

ESPCRC

図6 スペイン対コスタリカのグラフ

グループステージ初戦 スペイン7-0コスタリカ μ+0.5σ= 285 tpm

表6 スペイン対コスタリカの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
4:05 4:05 1 301 スペインの先制ゴール
4:18 4:19 2 376 スペインの2点目
4:21 4:21 1 294
4:25 4:27 3 495.7 スペインの3点目
5:15 5:16 2 350.5 スペインの4点目
5:27 5:28 2 325.5 スペインの5点目
5:33 5:33 1 295 同グループの裏試合で日本がドイツに逆転
5:35 5:39 5 317
5:40 5:42 3 492.3 スペインの6点目
5:43 5:46 4 431.5
5:47 5:53 7 390 スペインの7点目

3.2.4 オランダvsエクアドル

NEDECU

図7 オランダ対エクアドルのグラフ

グループステージ第2戦 オランダ1-1エクアドル μ+0.5σ= 251 tpm

表7 オランダ対エクアドルの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
4:09 4:12 4 432.8 オランダの先制ゴール
4:13 4:13 1 376
4:14 4:18 5 354.8 オランダのチャンス
4:19 4:21 4 236.8 エクアドルのチャンス
4:22 4:24 3 293 オランダGKの連続セーブ
4:48 4:48 1 262 前半終了
5:09 5:11 4 221.8 エクアドルの同点ゴール
5:52 5:55 4 387.5 エクアドルのエースが負傷

3.2.5 ポーランドvsサウジアラビア

POLKSA

図8 ポーランド対サウジアラビアのグラフ

グループステージ第2戦 ポーランド2-0サウジアラビア μ+0.5σ= 281 tpm

表8 ポーランド対サウジアラビアの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
4:13 4:15 3 302.7 サウジアラビアの攻勢
4:18 4:21 4 310.8 ポーランドGKのビッグセーブ
4:22 4:23 2 312 サウジアラビアのビッグチャンス
4:25 4:27 3 296.3 ポーランドの連続ファウル
4:30 4:30 1 320 両チームによる小乱闘
4:32 4:32 1 293
4:38 4:43 6 385 ポーランドの先制ゴール
4:45 4:47 3 314 サウジアラビアPK先制
5:11 5:12 2 292 サウジアラビアの連続チャンス
5:22 5:24 3 446.7 ポーランドの2点目
5:26 5:26 1 327
5:31 5:31 1 306 ポーランドのGKの連続セーブ

3.2.6 ガーナvsウルグアイ

GHAURU

図9 ガーナ対ウルグアイのグラフ

グループステージ最終戦 ガーナ0-2ウルグアイ μ+0.5σ= 127 tpm

表9 ガーナ対ウルグアイの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
1:31 1:32 2 229.5 ウルグアイの先制ゴール
1:39 1:44 6 234.8 ウルグアイの2点目
1:45 1:45 1 148 2点目によりウルグアイの決勝T進出決定的
1:48 1:48 1 138
1:49 1:50 2 142
2:36 2:37 2 195.5 ウルグアイのPKがVAR判定によって取消
2:57 2:59 3 287.3 同グループの裏試合によってウルグアイのGS敗退決定的

3.2.7 日本vsクロアチア

JPNCRO

図10 日本対クロアチアのグラフ

決勝トーナメント1回戦 日本1-1(PK:1-3)クロアチア μ+0.5σ= 251 tpm

表10 日本対クロアチアの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
0:41 0:41 1 258 日本ゴール前のチャンス
0:43 0:49 7 411 日本の先制ゴール
1:13 1:16 4 351.8 クロアチアの同点ゴール
1:21 1:21 1 259
1:52 1:53 2 271.5 延長戦開始
2:33 2:36 4 464 PK戦開始
2:37 2:41 5 500.6 クロアチアGK連続PKセーブ
2:42 2:42 1 628

3.2.8 クロアチアvsブラジル

CROBRA

図11 クロアチア対ブラジルのグラフ

準準決勝 クロアチア1-1(PK:4-2)ブラジル μ+0.5σ= 751 tpm

表11 クロアチア対ブラジルの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
1:35 1:36 2 860.5 延長戦開始
1:53 1:53 1 774 ブラジルのチャンス
1:55 2:02 8 1284.6 ブラジルの先制ゴール
2:13 2:18 6 1559.5 クロアチアの同点ゴール
2:19 2:24 6 1363 延長戦終了、PK戦開始
2:25 2:27 3 1171.7 クロアチアGKのセーブ
2:28 2:29 2 1160 ブラジルPK失敗、敗北

3.2.9 オランダvsアルゼンチン

NEDARG

図12 オランダ対アルゼンチンのグラフ

準準決勝 オランダ2-2(PK:3-4)アルゼンチン μ+0.5σ= 1205 tpm

表12 オランダ対アルゼンチンの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
4:35 4:35 1 1461 アルゼンチンの先制ゴール
5:33 5:33 1 1263 アルゼンチンの2点目
5:38 5:39 2 1561 オランダの1点目
5:40 5:41 2 1799.5
5:50 5:58 9 2465.4 オランダの同点ゴール
6:07 6:08 2 1239 両チームによる小乱闘
6:24 6:30 7 1676.9 アルゼンチンGKのPKセーブ
6:31 6:32 2 1567.5 2回目のセーブ
6:36 6:37 2 1946.5 試合終了

3.2.10 モロッコvsポルトガル

MARPOR

図13 モロッコ対ポルトガルのグラフ

準準決勝 モロッコ1-0ポルトガル μ+0.5σ= 1100 tpm

表13 モロッコ対ポルトガルの試合内容

グループ番号 開始時刻 終了時刻 継続時間(min) 平均tpm 試合内容
1:06 1:06 1 1159 モロッコの攻勢
1:08 1:09 2 1136
1:13 1:16 4 4126 モロッコの先制ゴール

この試合は後半のログが取れていなかったため、前半のみのグラフである。

3.2.11 平均値による対比分析

前述の研究でグラフに平均線を挿入した。今回、その線を超えた時間帯(盛り上がった時間帯)と下回った時間帯の比を出した。その比を近似値にし、その値が高い方が盛り上がりの多い、つまり面白い試合と結論付けた。下記で値が高い順に結果を示す。

①ポーランドvsサウジアラビア 30 : 81 ≈ 0.3704

②スペインvsコスタリカ 31 : 86 ≈ 0.3605

③オランダvsエクアドル 24 : 86 ≈ 0.2791

④セネガルvsオランダ 23 : 96 ≈ 0.2396

⑤クロアチアvsブラジル 28 : 122 ≈ 0.2295

⑥オランダvsアルゼンチン 28 : 130 ≈ 0.2154

⑦アルゼンチンvsサウジアラビア 23 : 124 ≈ 0.1855

⑧日本vsクロアチア 25 : 138 ≈ 0.1812

⑨ガーナvsウルグアイ 17 : 103 ≈ 0.1650

⑩モロッコvsポルトガル 7 : 70 ≈ 0.1000

上記の順位を基に、分析をしていく。 各試合でピークがμ+kσとなるようなkの値を求めた。(式(2))その値が大きい程面白い試合と定義し、上記の順位と比較する。下記にkの値の順位を示す。

ピーク時の値をlとする。

式

①スペインvsコスタリカ k≈ 6.3488

②クロアチアvsブラジル k≈ 5.2723

③日本vsクロアチア k≈ 4.9323

④オランダvsエクアドル k≈ 4.8435

⑤ポーランドvsサウジアラビア k≈ 4.2266

⑥セネガルvsオランダ k≈ 4.2086

⑦アルゼンチンvsサウジアラビア k≈ 4.0366

⑧モロッコvsポルトガル k≈ 3.2018

⑨ガーナvsウルグアイ k≈ 3.1999

⑩オランダvsアルゼンチン k≈ 2.1495

上記2つのデータを散布図で示す。

散布図

図14 kの値と対比近似値の相関関係

相関係数は0.76で、ある程度正の相関があった。試合の面白さを計る指標が異なっても、おおかた似たような順位になることが分かる。

3.3 考察

最初に感じたことは、平均約300~1000ツイート/分と、多量のツイート数であることだ。本研究以前に分析をしていた英プレミアリーグやJリーグでは平均約100~200ツイート/分と、ワールドカップは世界で一際注目されていることが分かった。全ての試合で共通していることはゴールの瞬間に急激にツイート数が伸びるという点だ。ゴールが決まらなくてもチャンスシーンが訪れるとある程度ツイートされることも確認できた。これはある程度予想できたが、状況や決まり方によって、同じ1点でも山の大きさや形が多種多様になることが分かった。グループステージよりも決勝トーナメントの試合の方がノイズは小さいように見えた。これは注目度が低い試合だとツイート数が少なくなり信用度が低いグラフになってしまうからだと推測できる。国民のTwitter利用者数、サッカー熱によってグラフが変わることも分かった。日本人のTwitter利用者数が非常に多いにも関わらず、日本対クロアチアのツイート数がそこまで多くない。これは、「#○○○●●●」という形が日本にはあまり浸透していないからだと考える。このハッシュタグの方式は、サッカーの母国イギリスをはじめ、海外ではサッカーの実況やコメントで使われている。欧州のサッカークラブ公式アカウントもほとんど利用している。日本では「#浦和レッズ」、「#ガンバ大阪」といった、自分のチームだけのハッシュタグにする他、そもそもハッシュタグを利用せずにつぶやく人も多い。そのため、世界を基準にすると比較は難しいのかもしれない。今大会で特徴的だったのがVARだった。この大会ではVARが何度も判定を覆し、話題を呼んだ。グラフにも、VARが発動されたときは山ができていた。内容はVARのおかげで得をしたツイートよりも、判定が覆って不満を露わにするツイートの方が圧倒的に多かった。したがって、VAR判定の山は悲観的な山だということが分かった。全体的に見ると、ワールドカップという世界中が注目する大会なため、ツイート数がきわめて多かった。欧州の世界一のクラブを決めるチャンピオンズリーグでさえも平均ツイート数の約2倍違うことが分かった。このことから、ワールドカップは世界でも、Twitter上のあらゆるコンテンツの中でもかなりの注目、人気があることを学んだ。平均値の分析によると、より点数がよく入った試合の値が大きくなる傾向にあった。それだけサッカーは得点の有無によって盛り上がりが変わることが分かる。ポーランド対サウジアラビア戦のように、得点シーンだけでなく激しい試合の攻防を繰り返すことでツイート数が多くなっており、平均値が底上げされていた。そのため、本研究の中で一番の面白い試合になったのだと予想する。ピークがμ+kσとなるようなkの値の順位と比較すると多少のばらつきがあるものの正の相関が見られた。2つのデータから、より得点が多く、攻撃的なサッカーであるほど面白い試合であることが分かった。

4 まとめ

本研究では、サッカーの試合に対するTwitterの盛り上がりを分析してきた。シーンによって盛り上がり方が変わるため、違いが生まれた。特にファンのサッカー熱によって山の振り幅が大きく変わることが分かった。グラフに表すことによって、どのシーンがファンにとってつぶやきたいのか分かりやすい結果となった。グラフだけではユーザーがどのような感情なのかは分からないが、つぶやきから照らし合わせて理解することができるため、楽観的なのか悲観的な山なのかを知ることができた。また、得点もチャンスも何もない時間帯で中程度の山や谷が生まれる傾向があった。これは、熱心なファンのツイートによるノイズであると考えられる。

今後の課題として、本研究では、2チームによる試合で1つのグラフであったため、両サポーターのツイートが入り混じっており、どちらのファンの盛り上がりなのかを特定することが困難だった。複数のハッシュタグを利用してそれぞれのチームのグラフを出すことによって2チームの盛り上がりの比較をするのもいいかもしれない。また、本研究を進めていく中で、その莫大な量のツイートのためにサーバーがリクエストエラーになることが多々あった。そのため全試合を収集できず、決勝戦や準決勝を分析することができなかった。今後は別の方法や工夫をして検証すべきである。本研究を通して分析の面白さを得ることができたため、別の大会やリーグにおける分析をし、さらなるデータ収集に努めていきたい。

5 参考文献

[1] ビデオリサーチ コーポレートサイト

[2] GOAL Japan

[3] ABEMA | 無料動画・話題の作品が楽しめる新しい未来のテレビ

[4] Twitter API Documentation | Docs | Twitter Developer Platform

[5] Twitter検索の結果をCSVに保存するツール「tw2csv」を作った