近年、テレビ放送ではアニメ番組が数多く放送されている。地上波テレビ放送であれば基本的に無料で視聴でき、衛星放送等では有料で一日中アニメを放送しているチャンネルも存在するほどである。テレビ放送されたアニメはDVD・Blu-ray Discに収録され販売されたり、関連グッズの販売、イベントの興行、映画化、等を通して大きな経済効果を生み出している。そんなテレビアニメの中でも、本研究では比較的最近の(概ね23時以降に放送する)深夜アニメ番組に注目したいと思う。
一方で、インターネットの急速な普及により電子掲示板やその他の情報通信技術を誰でも使えるような世の中において「実況」という行為が確立している。テレビ番組であれば感想や意見、イベントやコンサートであれば関連情報等をリアルタイムで伝達・共有・交換することになる「実況」は人々の関心を強く惹くものだと思う。
本研究では、テレビ放送されている「深夜アニメ番組」における「実況」を行なっている電子掲示板のスレッドに注目する。
「実況スレッド」には、有用・無用の見境なく多くの情報が書きこまれており、1000レスのスレッドが平均6スレッド消費されるような深夜アニメ番組において、週に8作品ほどのログを取得するだけでも48000件のデータを扱うことになる。それらの膨大な情報をデータマイニングすることにより、有益な結果を見出すことが本研究の目的である。
具体的には、放送中のアニメ番組を1話分見逃してしまったような時、該当する話数の実況スレッドのログの情報のみから如何にその話の情報を引き出せるか、ということを目標としていく。例えば、第3話まで登場していた登場人物が第5話には登場していなかった時「第4話でその登場人物に何が起こったか」ということを実況スレッドの情報から抽出するということである。
実況を目的としたスレッドを実況スレッドと呼ぶ。スレッドにおける実況とは、見聞きした事柄をリアルタイムに書き込むことである。
スレッドとは、電子掲示板における一つの話題についての書き込みの集合体である。新規にスレッドを作成することを「スレッドを立てる」と言う。そのスレッドで話し合いたい事を一言で述べた「スレッドタイトル」とそれに伴う本文を入力してスレッドを立てることができる(図2.1)。
スレッドが立てられ、それに対する書き込みをレスと呼び、以降は「レス」を含めた全体が「スレッド」として構成される(図2.2)。
2ちゃんねるとは、日本最大級の電子掲示板サイトである。2ちゃんねるは、スレッドの集合を「板」という表現でまとめ、板の集合を「カテゴリ」としてカテゴライズして構成されている(図2.3,2.4)。
本研究では、2ちゃんねるの実況chカデゴリ内の板に立てられるスレッドについて取り扱う。
2ちゃんねるの実況スレッドは、次のような特徴がある。
アスキーアート(ASCII Art:略してAA)とは、文字通りASCIIやその他の文字を用いて文字列のみで絵を描くことである。これは、意思疎通が文字でしか出来ない電子掲示板において、より多様な感情を表現するために用いられている。表情を表す「(´・ω・`)」や「( ゚д゚ )」のような物は顔文字と言われたり、「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」や「( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \」などは一行AAと言われたりする。
AAを用いるのは2ちゃんねるだけではないが、2ちゃんねる及び実況スレッドでは多用される傾向にある。中でも目を引くのが図2.5のような巨大AAである。
勢いとは、スレッドにレスされる速さを表すものである。一般的に分間のレス(res)数を〔res/min〕で表す。これにより「勢いがある」「勢いがない」等の表現を用いて、概念的にスレッドにレスされる量を表現する。
ここでは、2ちゃんねるの実況スレッドと勢いについてサッカー番組を例に示す。
仮に「日本対中国のサッカー試合の中継番組」がテレビで放送されるとする。すると、該当するテレビ局の板に「【サッカー】日本vs中国★1」「日本×中国Part1」などというスレッドタイトルでスレッドが立てられる。この時、一番最初の本文には、関連するwebサイトのURL等、または、スレッド数が2、3と増えた場合は「2スレッド目には1スレッド目のURL、3スレッド目には2スレッド目のURL」という様に同一スレッドタイトルの以前のスレッドのURLが書き込まれる(図2.6)。そして、レスの内容は「個人の選手のプレーに注目したもの(○○すげー、等)」「試合の動きに沿ったもの(イエローカード出た、コーナーキックになった、等)」「ゴールした時のもの」等になる。この時、勢いの変動は「平然と試合が行われてる間はさほど勢いがなく、ゴールや特別なプレーが起こった時に勢いが出る」と、予想される(図2.7)。
1話30分の地上波で放送されるアニメ番組は、番組開始から順番に概ね次のような構成になっている(図2.8)。
以上が標準的な30分アニメ番組の構成である。
また本編映像は、本編が3本立ての時はA・B・Cパートに分かれ間にCMが2回、1時間スペシャルの時はA・B・C・Dパートに分かれ間にCMが3回等、パートが増えることがある。
以上は機械的な構成であり、そのアニメの全話で一つの物語としたときのストーリー上の構成があり、これは起承転結で分類することができる。
まず、全話を通した起承転結を考えると全12話の作品の場合、概ね1〜2話が「起」3〜7話が「承」8〜10話が「転」11〜12話が「結」というように分類することができる。例としては、1〜2話が主要な登場人物の登場・3〜7話が小規模な事件の発生やさらなる登場人物の登場・8〜10話で重大な事件や出来事が発生・11〜12話で解決、等という展開が考えられる。
さらに、1話毎にも起承転結が存在している。これは、前編・後編に分けられたり、そう表記されなくても意図的に2話に跨いで展開する場合もある。例えば、第1話では主人公を含む主要な登場人物が登場することが基本である。その第1話の中でも、人物の登場・何らかの事件や出来事・その解決、と言った流れをアニメの1話毎の起承転結と考えることができる。
テレビアニメ番組における実況スレッドのレスと勢いには様々な特性がある。この章では、それらの特性について述べる。
テレビアニメ番組の1回(30分)の放送におけるレス数は、勢いがなくても3000レス(3スレッド・100〔res/min〕)程度、勢いがあれば9000レス(9スレッド・300〔res/min〕)以上に及ぶことがある。
また、この勢いの有無は絶対的に“作品の人気や面白さ”を反映しているとは言えない。そもそも“面白さ”とは人それぞれであるが、実際に筆者が面白いと思った作品の実況スレッドの勢いがあまり無かったり、何が面白いのか分からない作品でも異常な勢いを見せたりすることがある。他にも、第1話の放送時には全体量が多くなったり、全話数中の中盤では全体量が少なくなったりすることもある。
前述したアニメ番組の構成の節目に勢いが変動する傾向がある。例えば、番組開始を意味するアバンタイトルやオープニングの開始時には著しい勢いの増加が見られる。同様に、Aパート開始時、Bパート開始時、エンディング開始時、予告開始時、と節目毎に特定のレスがなされる傾向にある。
図3.1は実際のレスの一部であり、「A」とレスされている事がAパートの開始を表している。
ストーリーに関係するレスは、その作品を理解する上で最も重要であり、且つ最も解析の難しいレスとなる。サッカー等のスポーツであれば、多くレスがされる場面はある程度予想ができるが(点が入る時等)、アニメのストーリーに関わるレスは何時・どんなレスがされるか分からないものとなる。また、必ずしもレス数が多くなるわけではなく、同一内容のレスが少ない場合でもストーリーに関わったレスである場合もある。
ストーリーに関係するところの例としては「キャラクターの登場」「キャラクターの死亡」等がある。
図3.2は実際のレスの一部であり、ここでは「菜々子」というレスがされていることから、該当するキャラクターが登場したことが分かる。
特に、アニメ番組独特の要素の一つとして声優の存在がある。声優とは、声だけで出演する俳優であり、アニメではキャラクターの声を演技する。近年では、特にこの声優に対する関心が高まっており、実況スレッドにおいてキャラクターの登場であっても、そのキャラクターの声を演じる声優の名前もしくはその声優を指すスラングがレスされることがある。言うなれば、「ワンピース」でルフィが出てきた時に「田中真弓」、「ドラゴンボール」で悟空が出てきた時に「野沢雅子」とレスされるようなものである。以下に例を挙げる。
ここで、釘宮理恵・堀江由衣・田村ゆかりに対するレスは、当人の名前を呼ぶためのあだ名であり、それをさらに感情の昂ぶりに乗せた結果生成された表現だと思われる。しかし、中には小清水亜美のように当人の名前等に関係ないスラングが存在する。この「絶対に許さない」というのは、小清水亜美が(アニメ等と関係の無い)一般的な昼のバラエティ番組に出演した時、小清水亜美は一般的には知名度が低く、司会や観客から微妙な対応をされたことから「(その番組を)絶対に許さない」というのが発端となっている。しかし、時が経つにつれ「絶対に許さない」というレスに対して「もう許してやれよ・もう許した」などのレスがされるようになり、さらに、いつの間にか「(小清水亜美を)絶対に許さない」という表現に変わってしまい、今でも小清水亜美が出演すると「絶対に許さない」やそれに類するレスがされるようになってしまっている。
このように電子掲示板(特に2ちゃんねる)では、様々な要因によりスラングが生まれ、それが実際の出来事から二転三転して形成されていることがしばしばある。
図3.3は実際のレスの一部であり、「絶対に許さない」等のレスがされていることから、小清水亜美が演じるキャラクターが登場したことが分かる。
表現に関係するレスは、全く別のアニメ作品であっても共通して、特定の表現をするシーンが流れた場合になされるものである。声優に関係するレスと同様にスラング等が用いられる。これらのレスは多くなる傾向にるが、内容に深く関係しないレスである場合も多い。以下に例を挙げる。
視聴者が笑ってしまうようなシーンとは、キャラクターが面白い行動をしたり、ギャグを入れたりするシーンである。この時、多くなされるレスとして「w」というものがある。これは、電子掲示板(もしくは文字でしか情報伝達ができない時など)で自分が笑っていることを表すために、文末に「(笑)」という書くことが由来となっている(例としては「それはないだろう(笑)」等)。「w」とは、“(笑)”が“(笑→(ワラ→(わら→(wa→(w→w”というように短縮していった結果である。通常は「w」が1つでのレスになるが、爆笑・バカ笑いしてしまうような表現があった時には数を多くして「wwwwwwww」などとレスされることがある。
レズとはレズビアンのことで、女性の同性愛もしくは同性愛者を指す。逆に、ホモとは男性の同性愛もしくは同性愛者を指す言葉である。ただしアニメの実況では、女性キャラクター(もしくは男性キャラクター)同士が絡んでいるシーンであれば、愛や性行為がなくても該当のレスがされることがある。
これらの表現に関係するレスは、AAでレスされることも多い。中でも「キマシタワー」は図3.4、「アッー!」は図3.5,3.6などのレスがある。
図3.4は文字部分とキャラクター部分で構成されているが、文字部分は文字通り「キマシタワー」、キャラクター部分はレズ(百合)を題材とし2006年の4月から9月に放送されたアニメ「ストロベリー・パニック!」に登場するキャラクター「涼水玉青」である。実際はこのキャラクターがレズシーンで絡むのではないが(絡むシーンもあるが)、恍惚の表情をAA化し、「ストロベリー・パニック!」の舞台がお嬢様学校であることから「キター」が「キマシタワー」に変化したものだと思われる(涼水玉青による「キマシタワー」は作中ではレズとは関係ないシーンで一度しか発言されていない)。
図3.5のキャラクターは、山川純一の「くそみそテクニック」という漫画に登場する「阿部高和」である。ホモを題材とした漫画であり、その作風やインパクトからキャラクターがAA化され、ホモに関係するレスではよく用いられている。このAAのセリフは作中では発言されておらず、後に付加されたものである。
図3.6は文字をそのままAA化したものである。「アッー!」とは、男性同士が性行為する時に発せられるだろうと思われる声を表したものである。また、レズに関係するAAよりもホモに関係するAAの方が多い。
地域差とは、例えば関東と関西でレスのされかたが異なるということである。そもそもテレビ放送においては、関東と関西が相容れないものとなっているため(NHKや同時ネット等は除く)、実況スレッド(板)も別々に存在する。また、アニメ番組の場合、放送日や放送時間が異なっていることも多い。レスに関する地域差については、実況する人数に拠る全体量の変化や、放送局の構成の違いによる変化が考えられるが、放送内容の表現に対するレスの多少に変化が見られることもある。
この章では、実際に放送されたアニメ及びその時の実況スレッドのログを用いて、アニメの進行とそれに伴う勢いやレス内容がどういったものになっているかを述べる。
取り上げるアニメは「Persona4 the ANIMATION」である。
Persona4 the ANIMATION とは、2008年7月10日にアトラス(現・インデックス)より発売されたプレイステーション2ソフトで同社の『ペルソナシリーズ』の4作目となるRPG「ペルソナ4」を原作としアニメ化された作品である。
関東ではTBS(株式会社TBSテレビ)で2011年10月より毎週金曜日25時55分(土曜日1時55分)から放送されている。また、MBS・CBC・アニマックスでも放送している。放送は全25話を予定しており、12月17日現在でTBSにて第11話まで放送済である。
以下、アニメ公式ホームページより引用する。
というイントロダクションであるが、原作がゲームであり、かなりゲームの内容に忠実にアニメ化されている模様(筆者は原作ゲームを未プレイ)なので、全25話中1/3〜1/2である第9話時点では一般的なRPGから予想される「仲間(パーティーメンバー)が増える(増えている)」段階だと筆者は感じている。
ここでは、第9話時点で登場しているPersona4 the ANIMATIONのキャラクターを紹介する。CV(キャラクターボイス)とはそのキャラクターを演じる声優である。
主要登場人物とは、主人公およびその仲間として原作ゲーム内ではパーティーメンバーになると思われる登場人物である。一応、市内で起きている事件の「謎」を捜査する、というストーリーになっているので、自称特別捜査隊という肩書きを持っているが、アニメの中では深く言及されていない。
以下、公式ホームページより引用する。
「ジュネス」とは、作中に登場する大型ショッピングモールである。
サブキャラクターとは、主要登場人物ではないキャラクターとして一緒くたに分類される登場人物である。ストーリーに大きく関わってくる人物もいれば、そうでない人物もいる。
以下、公式ホームページより引用する。
「ベルベットルーム」は、他の登場人物の過ごす世界とは別の世界であるような描写がされており、ここに登場するイゴールとマーガレットは特異な登場人物と言える。また、ベルベットルームのシーンは基本的にはアバンタイトルのみであり、本編で登場することは稀である。
コミュニティとは、一般的なアニメであればサブキャラクターに分類される登場人物であり、Persona4 the ANIMATIONのみに存在する特別なカテゴライズである。これらの登場人物は後述するペルソナに関係しており「悠がこれらの登場人物と親睦を深めることにより対応する“アルカナ”を手に入れ使役できるペルソナが増える」という設定になっている。最もこの設定はゲーム性の高い設定であり、アニメの中では深く言及されておらず、特定の話数で悠とこれらの登場人物が一定の接触をすることにより設定を満足している。
以下、公式ホームページより引用する。
ペルソナとは、主要登場人物らが召喚・使役して敵との戦闘(一般的なRPGで言うところの戦闘)をこなすキャラクターである。
以下、公式ホームページより引用する。
以上は第9話までに登場するペルソナである。恐らく主要登場人物には、固有のペルソナが全員分設定されているものと思われる。主要登場人物がペルソナを使役できるようになる為には、後述する敵である“シャドウ”を倒す、というプロセスが必要になる。しかし、どちらかと言うと「主要登場人物に“シャドウ”が発生してしまって、倒した結果ペルソナが使役できるようになり仲間(パーティーメンバー)に加わる」と言った方が正確であり、それが作品のストーリーの一部となっている。ただし、悠だけは最初からイザナギを使役できる。
アルカナとは、前述したコミュニティの設定を満たすことにより悠が取得するものである。故に、悠は自身のペルソナであるイザナギ以外にも(第9話時点で)4体のペルソナを使役できることになっている。またコミュニティは悠と悠以外の主要登場人物の間にも発生する。アルカナによるペルソナの使役はコミュニティと同様ゲーム性の高い設定であるためアニメの中での言及が少ない。
シャドウとは、主要登場人物らが倒す“敵”である。「○○の影」を倒すことにより該当する登場人物がペルソナを使役できるようになる。この“影”を一般的なRPGで言う、一体しか出現しない“ボス”とすれば、それ以外のシャドウは複数体出現する“雑魚敵”ということになる。
以下、公式ホームページより引用する。
本研究では、Persona4 the ANIMATIONの第4話から、2ちゃんねるの番組ch(TBS)板に立てられたPersona4 the ANIMATION実況スレッドのログの取得を開始した。そのため、実際の実況スレッドの観察は第4話から見ていくものとする。
第4話のサブタイトルは「Somewhere not here」であり、公式ホームページに掲載されているストーリー紹介文は以下の通りである。
Persona4 the ANIMATIONでは、第1話は悠がイザナギを召喚・使役するまでの導入的なストーリーであった。第2話は陽介の影が現れ、それを倒し陽介がペルソナを使役できるようになり仲間になるストーリーであり、第3話も同様に千枝の影が現れ、それを倒し千枝がペルソナを使役できるようになり仲間になるストーリーであった。最も、悠と悠以外の主要登場人物は事が起こる前から顔見知りであり、急に知り合い、仲間になったわけではなく、あくまで「戦闘に参加できるようになったかどうか」という意味合いの仲間入りである。
そしてこの第4話は、前回ペルソナを使役できるようになり、雪子の親友である千枝がメインとなって、雪子のシャドウを倒し雪子が仲間になるストーリーである。故に、公式のストーリー紹介では「覚悟を決めた千枝」という文句が用いられている。また「雪子は様子がおかしく」という文句は、○○の影というシャドウが前述のモンスターのような形態の前はその本人にそっくりであることから、それを示唆するものとなっている。
この日のTBSのPersona4 the ANIMATION第4話の放送は30分繰り下げとなり、26時25分からとなった。厳密には、TBSでは放送開始時刻から1分間CMが流れるため、26時26分からアニメが開始した。
なお、地域差に関しては、観察するためのMBSの実況スレッドのログを第8話から取得し始めたため、この章では取り扱わない。
第4話の放送開始(26時26分)から放送終了(26時55分)までの29分間でレス数は4606であった。これを、30秒毎に区切りその間のレス数を表4.1に表し、勢いグラフとして図4.1に示す。
時間〔分〕 | レス数 |
---|---|
26 | 111 |
26.5 | 112 |
27 | 36 |
27.5 | 26 |
28 | 98 |
28.5 | 88 |
29 | 84 |
29.5 | 138 |
30 | 74 |
30.5 | 62 |
31 | 74 |
31.5 | 48 |
32 | 71 |
32.5 | 84 |
33 | 66 |
33.5 | 57 |
34 | 55 |
34.5 | 67 |
35 | 66 |
35.5 | 44 |
36 | 60 |
36.5 | 117 |
37 | 50 |
37.5 | 39 |
38 | 17 |
38.5 | 56 |
39 | 122 |
39.5 | 100 |
40 | 125 |
40.5 | 61 |
41 | 103 |
41.5 | 89 |
42 | 130 |
42.5 | 95 |
43 | 84 |
43.5 | 62 |
44 | 78 |
44.5 | 79 |
45 | 65 |
45.5 | 69 |
46 | 86 |
46.5 | 108 |
47 | 137 |
47.5 | 100 |
48 | 79 |
48.5 | 94 |
49 | 76 |
49.5 | 85 |
50 | 156 |
50.5 | 151 |
51 | 137 |
51.5 | 49 |
52 | 48 |
52.5 | 35 |
53 | 45 |
53.5 | 58 |
54 | 81 |
54.5 | 19 |
まず、Persona4 the ANIMATIONはアバンタイトルがあり、第4話では26分〜27分までの間で、アバンタイトルが約25秒流れた後オープニングが開始されたため、多くのレスがされている。オープニングの中盤〜後半は勢いが落ちる傾向にある。またTBSで放送されるPersona4 the ANIMATIONではオープニングとAパートの間にCMがないため、28分頃に本編が開始されレス数が多くなっている。
次に、今回の“起”である29.5分頃、雪子(のシャドウ)が登場したためレスが増えている。それ以降はAパート終了まで“承”となる雪子の回想シーンが流れる。また、37分〜38分頃までCMに入ったため勢いを大きく落としている。CMに入る前の36分後半頃のレス数の増加については後述する。
そして、39分頃(正確には38分の最後の方)からBパートが開始したためレス数の増加が見られる。ここで“転”として、40分頃に第4話で初登場となるアラミタマが出現し、42分頃は人間形態であった雪子の影がモンスターのような形態になり「本格的なボスの登場」となったためレスの増加が見られた。これ以降、ボスとの戦闘になり盛り上がったためかAパートよりBパートの方が平均的なレス数も多くなった。
最後に、“結”として、47分頃にボスを倒すためレスの増加が見られる。この後、第4話で最も多いレス数を記録している50分台は構成とは関係ないため後述する。そのまま51分頃にエンディングに入るため、レス数の多さが持続している。さらにこの後は、エンディング後半からCMに入るため勢いを落とし、最終的に54分頃に次回予告が流れることで最後の勢いの増加を見せている。
ここでは、実際にレスされた内容を観察し、それらが構成・ストーリー・声優・表現等とどうのように関係しているかを述べる。
図4.1の勢いグラフの中で他と比べて山になっている(30秒間のレス数が前後と比べて多くなっている)所で同一内容が散見されたレスについて観察する。
第4話の実況スレッドにおけるレスを観察した結果、起・承・転・結などのストーリーの展開に関係する勢いの有無や特定の登場人物(キャラクター)の登場、(ある程度の)シーン毎に起こった出来事、等が分かることが分かった。しかし、レス数の多い所を抽出して観察した結果では、第4話のストーリーの軸である「雪子の過去や千枝との関係によるシャドウの発生、雪子と千枝の友情によって結果的にシャドウを倒すことができた」等の情報を得ることができなかった。
この章では、第4話と第5話の実況スレッドの勢いを比較する。なぜならば、第4話と第5話では、1話中のストーリー展開が大きく異なっておりレスの全体量や勢いグラフの山の付き方も異なっていたからである。
第5話も第4話と同じく2ちゃんねるの番組ch(TBS)板に立てられたPersona4 the ANIMATION実況スレッドのログを観察する。
第5話のサブタイトルは「Would you love me?」であり、公式ホームページに掲載されているストーリー紹介文は以下の通りである。
以上のように「バスケ部」という単語から第5話では八十神高校での生活を中心にストーリーが展開する。第1話から第4話では「テレビの中の世界」を中心にストーリーが展開していたため、第5話はそれまでの話とは異なったストーリー展開であると言える。しかし、一条康・長瀬大輔・海老原あいが初登場するが、これらの登場人物は前述した“コミュニティ”であり、第5話では「これらの登場人物と悠の親睦が深めるため“アルカナ”を手に入れ後に使役できるペルソナが増える」という全体の物語の観点からも、RPGという要素の観点からもストーリーは進展していると言える。
さらに第5話の詳細なストーリーは次のようになっている。ひょんなことから悠はバスケ部に勧誘され、海老原あいは嫌々ながらバスケ部のマネージャーをしているが、本当の理由は一条康が気になっていたからだということを悠に打ち明ける。そこで、海老原あいは悠に「一条康に好きな人がいるか聞いてほしい」と頼む、その結果、一条康は千枝が好きだということが分かってしまい海老原あいは失恋したが、悠に「私と付き合って」と迫ることになる。そのまま悠と海老原あいは何となく付き合い始めるが、そのことに対して千枝が単純な文句を陽介にぶつけた所、陽介が「千枝は悠のことが好きなんじゃないか」と勘違いし半ば強引に千枝をバスケ部のマネージャーとして仮入部させてしまう。自分の好きな一条康が千枝のことを好きだということを知っている海老原あいは当然、千枝に対してキツく当たる。そんな中、一条康は「次の試合が終わったらバスケを辞める(家の事情で)。また、勝ったら千枝に告白する」と言い出す。結果的には試合に負けてしまうが、一条康は「やっぱりバスケが好きだから辞めるの止める」と言う、その姿を見た海老原あいもまた一条康を好きでい続けるという決意をして、悠との何となくの付き合いも一段落が付く。
このように、第5話はラブコメディ風のストーリーになっていることからも、それまでシリアス風だった第4話までのストーリーと異なっていると言える。
この日のTBSのPersona4 the ANIMATION第5話の放送は定刻通り、25時55分からとなった。厳密には、TBSでは放送開始時刻から1分間CMが流れるため、25時56分からアニメが開始した。
第5話の放送開始(25時56分)から放送終了(26時25分)までの29分間でレス数は7857であった。これを第4話と重ねて、30秒毎に区切りその間のレス数を表4.2に表し、勢いグラフとして図4.10に示す。
時間〔分〕 | レス数(第4話) | レス数(第5話) |
---|---|---|
0 | 111 | 131 |
0.5 | 112 | 100 |
1 | 36 | 52 |
1.5 | 26 | 27 |
2 | 98 | 124 |
2.5 | 88 | 94 |
3 | 84 | 62 |
3.5 | 138 | 113 |
4 | 74 | 176 |
4.5 | 62 | 99 |
5 | 74 | 142 |
5.5 | 48 | 175 |
6 | 71 | 121 |
6.5 | 84 | 131 |
7 | 66 | 184 |
7.5 | 57 | 147 |
8 | 55 | 121 |
8.5 | 67 | 127 |
9 | 66 | 107 |
9.5 | 44 | 157 |
10 | 60 | 195 |
10.5 | 117 | 258 |
11 | 50 | 96 |
11.5 | 39 | 158 |
12 | 17 | 136 |
12.5 | 56 | 229 |
13 | 122 | 114 |
13.5 | 100 | 82 |
14 | 125 | 39 |
14.5 | 61 | 52 |
15 | 103 | 134 |
15.5 | 89 | 177 |
16 | 130 | 298 |
16.5 | 95 | 185 |
17 | 84 | 162 |
17.5 | 62 | 126 |
18 | 78 | 149 |
18.5 | 79 | 221 |
19 | 65 | 188 |
19.5 | 69 | 127 |
20 | 86 | 111 |
20.5 | 108 | 263 |
21 | 137 | 121 |
21.5 | 100 | 181 |
22 | 79 | 139 |
22.5 | 94 | 177 |
23 | 76 | 103 |
23.5 | 85 | 181 |
24 | 156 | 134 |
24.5 | 151 | 112 |
25 | 137 | 152 |
25.5 | 49 | 153 |
26 | 48 | 135 |
26.5 | 35 | 94 |
27 | 45 | 51 |
27.5 | 58 | 96 |
28 | 81 | 114 |
28.5 | 19 | 24 |
ここでも、4.2.2.3章と同様に実際にレスされた内容を観察し、それらが構成・ストーリー・声優・表現等とどうのように関係しているかを述べる。
図4.10の勢いグラフの中で第5話について他と比べて山になっているで同一内容が散見されたレスについて観察する。
まず、第5話と第4話では、レスの全体量が大きく異なる結果となった。
第4話のレス数が少なかった理由としては、第2話・3話・4話で毎回同じようなストーリー展開であり、若干のマンネリ化が感じられたからではないかと思われる。また、第4話は30分ながら定刻より深い時間に放送されたため、視聴者数が減った可能性も考えられるが、6話以降でも30分押しで放送された回があり、その時の実況スレッドのレス数は第4話ほど少なくなかったため、放送時間による影響は小さい可能性の方が高いと思われる。
反対に、第5話のレス数が多かった理由としては、そもそも第4話までのストーリー展開のパターンから外れてマンネリ化を脱した、ということが考えられる。また、第5話に出演した声優である伊藤かな恵・小野大輔・杉田智和は、それなりに人気のある声優であり、勢いグラフで山になっていなくても断続的に名前のレスがなされていたことから、という理由も考えられる。
次に、第5話の勢いグラフと山の部分のレスの内容からでは、起承転結やストーリー展開を知ることが難しいことが分かった。前半では、キャラクターの登場に合わせてレス数が多くなったため、「起」あたりの出来事は何となく把握できるが、以降のレスが多くなった所とレス内容は、ストーリーとは殆ど関係のないものであった。また、4.3章では一番最初にレス数の多くなるアバンタイトルのシーンの観察は敢えて取り上げていない。ただしPersona4 the ANIMATIONのアバンタイトルは、毎回同じようであるが偶にイゴールが登場しなかったり、アバンタイトルそのものがベルベットルームでなかったりすることもあるので、本来は観察すべきである。
また、本編の途中でレスが特徴的に減る所は明らかにCMが流れている所であり、これは第4話と第5話で異なっていることから、各グラフを比較することによってAパート・Bパートの長さが違うことが分かった。
この章では、第8話のTBSとMBS(株式会社毎日放送)の実況スレッドの勢いを比較する。なぜならば、筆者は関東に在住しており、第7話までは当然ながら近畿広域圏で放送されているMBSの実況スレッドのログの取得は行なっていなかったが、放送されている内容は同一のはずであり、同じ話数でも実況スレッドの内容は関東圏と近畿広域圏で異なるのではないかと考えたからである。
TBSの第8話は、第4話と同じく2ちゃんねるの番組ch(TBS)板に立てられたPersona4 the ANIMATION実況スレッドのログを観察する。
MBSの第8話は、2ちゃんねるの番組ch(西日本)板に立てられた「アニメ関西ローカル」スレッドのログを観察する。
第8話のサブタイトルは「We've lost something important again」であり、公式ホームページに掲載されているストーリー紹介文は以下の通りである。
第8話も第5話と同様、八十神高校の生活が中心であり第8話は、その一環である林間学校を舞台にストーリーが展開する。公式ストーリーでも「楽しいひと時」と書かれている通り、第8話のAパートの前半とBパートの後半は、恐らくこの先の展開にも影響しないような変哲もない林間学校をギャグ調が強めで展開する。そのため、この先のストーリーに影響しそうな話が展開するのはAパートの後半とBパートの前半となっている。
Aパートの後半では、小西尚紀が登場する。小西尚紀は、第5話で登場した海老原あいらと同様にコミュニティである。小西尚紀の姉である小西早紀は2話の時点で事件に巻き込まれ死亡しており、意気消沈している小西尚紀を悠と仲間たちで元気付けることによって悠がアルカナを手に入れる展開となっている。
Bパート前半では、推理パートと銘打たれており事件の推理が少し進展するものとなっている。具体的には「第8話時点で、事件に巻き込まれた人物(雪子、完二、小西早紀らサブキャラクター)は全員テレビに映ったことがある」というものである。
TBSのPersona4 the ANIMATION第8話の放送は定刻通り、25時55分からとなった。厳密には、TBSでは放送開始時刻から1分間CMが流れるため、25時56分からアニメが開始した。
MBSのPersona4 the ANIMATIONの定刻は毎週木曜日25時30分(金曜日1時30分)であり、第8話の放送は定刻通り放送された。MBSは正確に25時30分からアニメが開始されている。
TBSの第8話の放送開始(25時56分)から放送終了(26時25分)までの29分間でレス数は7843であった。
MBSの第8話の放送開始(25時30分)から放送終了(25時59分)までの29分間でレス数は7134であった。
これらを重ねて、30秒毎に区切りその間のレス数を表4.3に表し、勢いグラフとして図4.20に示す。
時間〔分〕 | レス数(TBS) | レス数(MBS) |
---|---|---|
0 | 150 | 132 |
0.5 | 110 | 110 |
1 | 36 | 68 |
1.5 | 25 | 45 |
2 | 101 | 114 |
2.5 | 112 | 115 |
3 | 203 | 125 |
3.5 | 95 | 113 |
4 | 84 | 122 |
4.5 | 212 | 166 |
5 | 137 | 119 |
5.5 | 182 | 155 |
6 | 181 | 141 |
6.5 | 207 | 133 |
7 | 126 | 141 |
7.5 | 213 | 152 |
8 | 201 | 149 |
8.5 | 116 | 91 |
9 | 98 | 109 |
9.5 | 103 | 110 |
10 | 202 | 185 |
10.5 | 84 | 119 |
11 | 104 | 111 |
11.5 | 191 | 163 |
12 | 151 | 125 |
12.5 | 143 | 150 |
13 | 134 | 139 |
13.5 | 85 | 117 |
14 | 25 | 70 |
14.5 | 21 | 59 |
15 | 44 | 90 |
15.5 | 89 | 104 |
16 | 65 | 65 |
16.5 | 44 | 58 |
17 | 176 | 142 |
17.5 | 276 | 217 |
18 | 230 | 196 |
18.5 | 162 | 130 |
19 | 158 | 141 |
19.5 | 114 | 95 |
20 | 131 | 106 |
20.5 | 244 | 178 |
21 | 114 | 100 |
21.5 | 111 | 119 |
22 | 235 | 245 |
22.5 | 238 | 132 |
23 | 198 | 146 |
23.5 | 179 | 162 |
24 | 175 | 143 |
24.5 | 160 | 180 |
25 | 207 | 144 |
25.5 | 84 | 55 |
26 | 178 | 115 |
26.5 | 92 | 105 |
27 | 47 | 45 |
27.5 | 97 | 119 |
28 | 134 | 116 |
28.5 | 29 | 38 |
ここでは、図4.20の勢いグラフにおいて特にTBSとMBSの差が大きいと見られる、3分・6.5分・7.5分・22.5分について同一内容が散見されたレスについて観察する。
まず、第8話のTBSとMBSの実況スレッドでは、レス数の全体量がTBSの方が700レスほど多いという結果になっていた。これは、誤差の範囲、もしくは単純に「TBSの方が実況する人数が多いから」であると考えられる。
次に、秒間レス数の差については、前述の実況する人数を考慮してもTBSがMBSより多くレスされている所があると分かった。ただし、6.5分や22.5分ではMBSが“スレッド移行”をしているため、その分だけ差が付いたと考えられる。スレッド移行とは、現行のスレッドのレス数が1000に達し書き込めなくなり次のスレッドに書きこまなければならないことである。1000レスに達する前に書き込みを送信したとしても他の実況者の方が早く、書き込みが成功しないとその分勢いに対してタイムロスが発生することになるのである。4分や7分、24.5分ではTBSもスレッド移行をしていると考えられ、一時的にMBSの勢いを下回っている。また、中盤の勢いが落ち込むCMが流れている時もMBSがTBSの勢いを上回っており、これはCMの内容等も関係していると思われる。
仮に、スレッド移行していないにもかかわらず、人数の多いと見られるTBSよりMBSの方が勢いがある場合があるならば、それは「TBS実況は勢いが出る時と無くなる時の差が激しく、MBS実況はその差があまりない」と言えるのではないかと思う。
この章では、Persona4 the ANIMATIONの第4話・第5話・第8話(TBS・MBS)の放送本編および実況スレッドの観察を行った結果の総合的な分析を述べる。
まず、図5.1に今回の研究で作成した第4話から第8話までの勢いグラフをすべて重ねたものを示す。レス数の全体量を見ると、話数毎に異なっていることが分かる。また、第8話のように地域によってもレス数・勢いに差が出ることが分かった。
ここでまず注目するのは、開始から2分ほどの間である(図5.2(a))。各話の全体的なレス数・勢いの変化などは様々であるが、開始から2分間ほどは、ほとんど同じ勢いの付き方をしている。これは、Persona4 the ANIMATIONというアニメにおいて、毎回の開始はアバンタイトルから始まり、アバンタイトルが決まった秒数で終了しオープニングに入るからであると考えられる。オープニングは、特殊なアニメでない限り毎回同一の物が流れるので、勢いの付き方も同一になることは予想できる。Persona4 the ANIMATIONでは、特にアバンタイトルも毎回「ベルベットルーム」でイゴールとマーガレットが発言し、発言内容は多少異なるがほぼ同一のシーンが流れていることになる。そのため、Persona4 the ANIMATIONにおいては開始から2分間ほどは毎回同じような勢いの付き方になると言える。また、最後の1分から1分半の勢いの付き方も開始から2分間ほどと同様に、ある程度一定したものとなっている(図5.2(b))。ここは、次回予告であり多少内容は異なりながらも「毎回同様のものが流れる」という点ではアバンタイトル等と同様であるため、勢いの付き方も一定になることが分かる。
このように、実況スレッドの勢いの付き方にはパターンの様なものが見られることが分かった。これは、作品のストーリーの情報を抽出する上では効果が小さいのではないかと考えられる。恐らく、第1話から第4話くらいまでを観察すればパターンの様なものが分かり、以降の観察・分析ではパターン化しているところを除くということができると思う。しかし、逆にそれまではパターンの様な勢いの付き方をしていた所に急激な変化(レス数の増加)が認められたとしたならば、その部分に注目することによって何らかの有効な情報が抽出できる可能性もあると考えられる。
次に、12分から15分では勢いが著しく低下している(図5.2(c))。これはCMが流れているからであると予想できる。最近では、面白いCMや目を引くCMも流れることがあるが、基本的にCMは本編に比べて見所があるわけではないので、勢いが低下することも納得できる。テレビアニメの基本的な構成の観点からAパートとBパートの間には必ずと言ってよいほどCMが流れる。そのため、第5話の観察の時にも述べたが、このCMの入るタイミングが勢いグラフから分かるということは、その回のAパートとBパートの比率が分かるということになる。
最後に、全体的な勢いの付き方に注目する(図5.2(d))。この全体的な勢いの付き方はストーリーの起承転結に関係しているのではないかと考えられる。「起」の部分と思われる最初の数分は多少勢いが多くなり、CMに入る前まで(Aパートの後半)は「承」として多少勢いが落ちる。そしてCM明け(Bパート前半)で物語が「転」となり勢いが多くなり、Bパート後半で「結」となり多少勢いが多くなる。これにより、起承転結の勢いの付き方もアバンタイトルや次回予告と同様のパターンの様なものと考えることができる。第4話・第8話では起承転結に沿って勢いが変化していると見られるが、第5話ではAパートの後半でも勢いが多くなっていたりする。これは、第5話では全体的には起承転結の流れを取っているにもかかわらず、特定の登場人物(新しい登場人物)の登場や本編の構成・ストーリーに関係のない描写・表現で実況者の目を引いてしまったことからレスの増加を招き勢いの付き方が変化してしまったのでないかと考えられる。このように、パターンとそのパターンを崩す変化に注目することによって、その回の情報抽出に役立てることができるのではないかと思う。
本研究では、まず実況スレッドのレス数を30秒毎に区切り勢いグラフ化することによって、実況スレッドとアニメにどのような関係があるのかを観察した。その後、実際に実況スレッドにレスされた内容を観察した。今回、このレス内容の観察は勢いグラフの山になっている所を中心に行った。なぜならば、勢いグラフの山になっている所は30秒間のレス数が多い所であり、レス数が多いということは多数の実況者が同一の感想・内容をレスしているのではないかと考えたからである。それにより、その瞬間の出来事を捉えやすくなりアニメの情報が抽出しやすくなるのではないかと考えたからである。
まず、この勢いグラフの山になっている所のレス内容の観察では、予想通り同一内容のレスが散見された。これにより登場人物の登場・特徴的な出来事・特徴的な表現などが同一で多数のレスがされることによりアニメ情報を抽出するために役立った。中でも、番組開始(アバンタイトル)・登場人物の登場・ギャグシーン・特定(レズやホモ等)の表現のあるシーン、等では勢いグラフが山になることが多かった。
一方で、レスが多数なされたからと言って、必ずしもその場面・レス内容がそのアニメ・該当話数のストーリー等を知る上で有効な情報であるとは言い難かった。特に分からなかった点としては「登場人物の登場・出演していることは分かるが、そのシーンがどの場所で展開されているか(場所・背景)」、「登場人物がどこからどこへ移動したか」等である。
本研究では、実際に放送している深夜アニメ番組「Persona4 the ANIMATION」を取り上げ、実際の実況スレッドからログを取得して考察を行った。
まず、アニメ番組の構成と実況スレッドの流れを確認するために、第4話の実況スレッドのログを30秒毎に区切り、その間のレス数を表・グラフ化した。そして今回は、グラフの山になっている(=30秒間でのレス数が前後と比べて多い)所に注目して、詳細なレスの解析を行った。その結果、グラフが山になっている所では同一内容のレスが散見され、多くの視聴者が同一の反応や感想を示していることが分かった。さらに1話の中でのストーリー展開における起承転結とグラフの起伏が関係しているだろうということが分かった。しかし、グラフの山にだけ注目しても、ストーリーの詳細な情報の入手は難しいように思えた。
次に、第5話のストーリー展開が第4話までのものと異なっていたため、実況スレッドのログを第4話と同じ形式で表・グラフ化し比較・考察を行った。第5話と第4話は、そもそもレス数の全体量が異なり、第4話が4600レス程度なのに対して第5話は8000レス近くという量であった。レス数の全体量の変化は、ストーリー展開・登場するキャラクター(出演する声優)等によって変化する可能性があるということが分かった。また、1話の中でのストーリー展開における起承転結も第5話と第4話では異なっていた。そのためか、グラフの山の付き方(それぞれの山の起伏の比率)も異なっていたことが分かった。そして、第5話のグラフの山に注目したレス内容の観察では、第4話以上にストーリーの詳細な情報の入手が難しいように思えた。第5話のストーリーを一言で言ってしまうと「コミュニティと接触して(親睦を深めて)アルカナを入手した」ということになるが、これはある意味では第4話に比べて「有意義な内容が無い・少ない」というように感じられ、それがレス内容にも反映され、ストーリーの詳細な情報の入手を困難にしたのではないかと思われる。
最後に第8話の実況スレッドのログをTBSとMBSでの放送分から取得し、比較・考察を行った。まず、各実況スレッドのレス数の全体量はTBSの方が700レスほど多かった。また、グラフの山の付き方は第4話と第5話を比較した時のように異なっており、同じ内容を放送していても地域によって時間毎のレス数が変化していることが分かった。しかし、グラフの山の付き方の違いの原因の一つにスレッド移行が関わっている可能性が考えられた。そもそも、TBSは作品別にスレッドを立てるのに対して、MBSは「アニメ実況スレッド」を一本化している。しかし、仮にMBSにも作品別スレッドが立ったとしても、実況している人数・レスされる数が異なれば、スレッド移行のタイミングは異なり、自然とグラフの山の付き方も異なるだろうと予想される。一方で、スレッド移行が原因でないグラフの山の差やズレも発生しており、これらはそれぞれの放送の視聴者の興味・関心、レスのつけ方等が違うからではないかと考えられた。
今回の研究では、実況スレッドのログを時間で区切りレス数をグラフ化した時、グラフの山となっている所からレス内容の抽出を試みた。しかし、それだけでは当初の目的であるストーリーの詳細な情報を上手く抽出することは難しかった。そのため、今後はレス数の少ないグラフの谷や平らになっているところからもレス内容の抽出を試みようと思う。しかし、レス数の少ない所は同一のレス内容が少なく(悪く言えば実況者たちが好き勝手にレスしている可能性もあり)目立った情報を抽出するのが困難になると予想される。
また、2ちゃんねるに限ったことではないが電子掲示板のスレッドのレスには1つ1つに「ID」というものが付与されている。IDとは、IPアドレス毎にランダムで付与されるもので、IPアドレスが一致しない限り重複することはないので簡単な個人判別ができるものである。このIDを元にログを分析することによって「そのIDの所持者が何回レスをしたか」「その放送では何個のIDからレスされているか(レスしている人数の把握)」ということが分かることになるため、今後活用していく予定である。
そして、時間毎に区切りレス数でグラフ化したデータを統計学・数学的な観点から解析することによる新たな法則や現象の発見も期待できる。そこから、もう一度アニメの内容とログデータの解析を照らし合わせることにより、ストーリーのより詳細な情報を取得できるのではないかと期待できる。また、観察する作品を変更したり、作品の1話から最終話までを解析し、その結果を別の作品と比較することでも総合的な情報の抽出手段を探っていきたいと思う。